ジェンダーギャップを作る制度要因を探ってみる

今年もジェンダーギャップ指標が出ました。日本では女性総理大臣が誕生しましたが、1年だけでは大きな効果はなく、やはり今年も世界で最低水準という評価が続きました。

まぁ、この指標そのものを論じるのも飽きてきたので、ちょっとビジネス側面に焦点を当てて、男女格差を作り出す要因となりそうな指標を探してみました。ごく簡単に見てみようと思います。

ダボスマンの裏の顔?

今年も恒例のジェンダーギャップ指数が出ましたが、結果はいつもと変りなく、日本は世界最低グループとされています。何となく例年と比べて報道などでの扱いが小さかったような気がするのですが、気のせいでしょうか。

このレポート、例年は6月頃に出ていたんですが、今年は9月へと大幅に遅れました。

最初は反DEIのトランプ政権への忖度とか、「初の女性総理が生まれたのに、順位が変わらないなんて許さんぞ」と、日本政府が圧力をかけているんじゃないかとか疑ったりしました。こういうところから人間、陰謀論に闇落ちするんだろうなと、我ながら情けなくなりましたね。

真相は分かりませんが、WEF内の組織的混乱のせいでは、という見方があるようです。創設者クラウス・シュワブが内部告発(WEF資金の不適切な私的流用や、女性職員へのハラスメント)を受けて2025年4月に辞任、実務面のトップ(総裁兼CEO)も今年2月、エプスタイン疑惑の中で辞任という、かなり大きな混乱があったようです。真相は不明ですが、この辺りが原因だったのかもしれません。

ダボス会議を主催し、ジェンダーギャップ報告も作成するWEF。これだけ「綺麗ごと」を世界に向けて発信する組織のトップがこれでは、「お前らに説教されたかねぇよ」という批判は避けられないでしょう。

2026年のジェンダーギャップ指数

この指標は「男女格差」だけに焦点を当てたものであり、この指標が高い(低い)から女性も幸せ(不幸)と言えるのか、特に所得水準も社会環境も異なる国横断で比べるのが正しいか等、色々と議論はあります。その辺はすでに色んな議論もあるので、もう特に何か言おうとは思いません。

まずは、さらっと去年と今年の指標を比較・確認しておきます。左上のグラフが今年の全体指標、その他が経済、教育、保健、政治の4側面の指標です。いくつか国名が出ているのが去年と今年で変化が大きかった国、また日本のポジションは赤で示しています。

全体指標で見ると、日本のポジションはほぼ変わらず、順位では世界117位(去年から1ランク上昇)でした。比較的大きく上昇したのがナミビア、グアテマラ、ケニア、アンゴラ、モルジブ、ニジェール、逆に指標が落ちたのが、バングラデシュ、カーボベルデ、エスワティニ、ペルーです。大きく変わるのは途上国ばかりというのが、どうもこの指標の信頼性・頑健性に疑問を感じてしまう一因なのですが。

個別側面とあわせて見ると、ナミビアは政治、ケニアは教育、モルジブとニジェールは経済で状況改善、バングラデシュとペルーは政治、カーボベルデは教育、エスワティニは経済での悪化が響いたようです。グアテマラ、アンゴラは全体指標が改善した国ですが、どこか特定の側面の改善で引っ張ったというより、各側面である程度の改善があったということでしょう。

よく言われるように、日本の指標の悪さは、まずは政治、次いで経済という感じです。指標的には経済はそれほど下ではないように見えますが、順位で行くと政治121位、経済119位とほぼ変わりません。

女性総理が誕生しましたが、指標の計算は「過去50年で女性トップだった年数」なので大きな影響はありません(それでも、この指標に限れば去年の81位→71位と10ランク上昇)。女性閣僚のシェアのほうが簡単に操作できそうですが、124位→97位(27ランク上昇)と上昇幅では大きいものの、低レベルでの変化です。

まぁ、この指標自体は、今回はこれ以上、深くは見ません。

女性のビジネス参加の容易さ

この指標そのものには個人的に「?」な気分はありつつ、日本に大きな男女格差があるのは厳然たる事実でしょう。日本の場合、女性管理職のシェアが低いのも、ジェンダーギャップ指標を大きく低下させる要因です。そこで女性の経済参加度合いについて、何か要因を説明できる指標がないかと探してみました。

当然、女性の労働参加率や教育水準といった変数が思い浮かびますが、もう少し女性の雇用・社会進出環境に関する制度的な質を示すデータがないかと探していたところ、世銀が作るWomen, Business and Law indexというのを見つけました。

このデータは、世界190ヵ国・地域を対象に、法律や制度が女性の経済的機会にどう影響しているかを数値化するというプロジェクトで、女性のキャリア形成の段階に沿った10指標から作成されています(完全に平等=100)。

10の評価指標は、

  • 移動(Mobility): 居住や旅行の自由
  • 職場(Workplace): 雇用における平等やセクシャル・ハラスメントの防止
  • 報酬(Pay): 同一労働同一賃金や残業規制の平等
  • 結婚(Marriage): 婚姻における法的権利と責任
  • 出産・育児(Parenthood): 育児休業や手当などに関する制度
  • 保育サービス(Childcare): 育児サービスの利用しやすさと質
  • 起業(Entrepreneurship): 融資やビジネス立ち上げにおける男女の平等
  • 資産(Assets): 相続や財産管理の権利の平等
  • 年金(Pension): 退職年齢や年金給与の計算の平等
  • 安全(Safety): ドメスティック・バイオレンスやセクシャル・ハラスメントなどからの法的保護

それぞれを

  • 法的枠組み(Legal frameworks)
    各国で実際に制定されている法令を分析し、男女平等が法制化されているか
  • 支援的枠組み(Supportive frameworks)
    その法律を機能させるための政策、機関、サービス、予算、アクセスなどの仕組みが整っているか
  • 実際の運用状況(Enforcement perception)
    法律や支援策が現場でどのように運用され、どのような結果をもたらしているかについて、現地専門家(弁護士、裁判官、活動家など)の評価

という観点でスコアリングしているものです。

この辺りの変数と世界各国の女性管理職シェアを比較することで、日本の問題などを見ることも可能なのかなと思い立ちました。今回はこの指標をざっと眺めるにとどめておき、もう少し真面目な分析はいずれやってみようと思います。

各側面の日本のポジション

以下が全体スコア(overall)及び各側面について、法的枠組み、支援的枠組み、運用状況のそれぞれの各国スコアを箱ひげ図で示し、その中での日本のポジションを示したものです。箱ひげ図の横線が中央値、箱の上限が上位25%、下限が下位25%を示します。

まず全体スコアで見ると、支援枠組みでは世界の上位4分の1辺り、一方で法的枠組みと運用状況では、日本は世界全体の中央値より少し下というイメージ。真ん中より下というのは、やはり先進国としては気になるところです。

どこでそんなに低いのか個別側面を見ると、法的枠組みと運用状況で特に低いのが「安全safety」と「報酬pay」です。報酬は容易に納得できますが、安全関連の法制度というのは、やはり職場でのハラスメント関連の規制なんでしょうか。両側面とも、支援枠組みについては上位25%辺りにいるのですが法規制と運用はスコアが低く、全体指標と似た状況ですね。

「年金pension」も下位25%の閾値を下回るほどではないですが、法的枠組みと運用では中央値より下、支援枠組みのみ中央値より上というところ。年金は現役時代の給与と関連するので、この辺りは報酬の低さとも関係しているのでしょう。

逆にスコアが高いのが「出産・育児parenthood」と「保育サービスchildcare」。この点は、法律、支援枠組み、実際の運用とも高くなっています(出産・育児の運用は中央値周辺ですが)。今、色んな「子育て支援」の公的支援策が競われていますが、この辺りはすでに「十分」という評価になっています。これが本当のところなのか、評価にムラがあるのか、私には判断する材料がありませんが、下手すると費用対効果の低いところ(単に分かりやすく、選挙民受けしやすいから)に政策が集中している恐れもあります。

「職場workplace」は、悪くはないという感じ。法的枠組みと運用では上位4分の1、支援枠組みでは中央値です。まぁ、日本のような先進国が、世界全体で数えて真ん中辺りでは不十分という見方もできますが。

「起業entrepreneurship」は法的枠組みと運用が中央値付近、支援枠組みは高いという位置づけです。女性起業家が目立たない日本の現状を考えると、ちょっとホンマかいなという感じもしますが、どうなんでしょう。

こうやってWBL指標を眺めてみると、よく言われる「子育て支援」関連では十分に評価されているが、年金を含めた報酬、安全面では制度と運用の弱さが目立ち、職場環境と起業では先進国としては物足りない(中央値付近)というように言えばいいのでしょうか。

もうすでに十分長い記事になってしまったので、もう少し真面目な分析は、いずれ稿を改めて行うことにしたいと思います。

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