タイミー融資で泥沼の借金地獄へ?

タイミーが金融事業を行う子会社「タイミーフィナンシャル」を設立しました。これが発表された際、ネットでは「お金がなくなったらタイミーで借りて、返済のためにタイミーで働け、って悪魔かよ」みたいなコメントが出ました。

まぁ、これを真面目に論じるつもりはありませんが、ちょっと面白い話だと思い、簡単なシミュレーションをやってみました。果たしてタイミーさんが借金地獄に堕ちてしまう可能性はあるのか?

タイミー利用と借金のスパイラル?

タイミーなどのスキマバイトについては、「他の仕事を経験することで本業にプラスになる」とか「リタイアしたシニア層の社会参加を進める」とったポジティブな見方もあります。色んなスキマバイトをしまくって、その経験をブログにしている方もいて、私も面白く読んでいます。

ただ一方で、特に昨今の物価高の中、本業の収入だけでは生活費が足りず、嫌でもタイミー・シフトを入れざるを得ないという層がかなりいるのも事実でしょう。

そんな中で発表されたタイミーフィナンシャルの設立。生活資金が足りない人がタイミーから借り入れたら、その返済のためにタイミー・シフトを増やさないといけなくなるわけで、借金地獄に陥るぞ!と揶揄されてしまったようです。

まぁ、現実的にはこういう人は、タイミー融資がなくても、他のソース(クレジットのリボ払い、キャッシング、アイフル等など)から借り入れている可能性が高く、タイミーフィナンシャルができたからと言って、新たに借金を始めるわけではないでしょう。

無理やり作ってみると?

というところで終わってしまっては全く面白くないので、ここではタイミー融資を受けた人が泥沼の借金地獄に堕ちてしまう「かもしれない」メカニズムを、無理やりに作ってみます。実際のタイミー融資がそうだと言うのでは決してなく、あくまで「お楽しみ」のための創作ですので、タイミーに訴えられたりしないよう切に願っております。

タイミー融資が他の融資会社に対して優位な点は、債務者の情報をよく知っていることです。他の融資会社であれば、相手がどんな人間か分からないため、機械的に融資判断(融資限度額〇万円等)をせざるを得ません。

一方、タイミー融資の場合、その人の過去のタイミー・シフトの頻度、勤務評価などを知っているため、もう少し詳しい審査ができます。例えば標準の融資枠が50万円だったとして、Aさんは従来から頑張ってタイミー・シフトを入れていて、勤務評価も高いので80万円まで融資可能、Bさんはあまり勤務評価もよくなく、シフト頻度もかなりムラがあるので40万円しか貸せない、といった細かい判断が可能になります。

こうなると、Aさんは「やったぁ、タイミーが融資枠を引き上げてくれたし、ちょっと贅沢しよう」となる誘惑にかられます。そうすると当然、返済額が増えるので、従来以上にタイミー・シフトを増やします。その結果、格付評価が上昇→融資枠がさらに拡大→返済負担の増加→さらにシフトを入れる、というサイクルになるかもしれません。こうなると、Aさんは借金地獄に陥ってしまう訳です。

シミュレーション枠組み

以上の枠組みでシミュレーションをしてみます。完全な「おもちゃモデル」で、そのレベルで楽しんで作ったもの。「この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。」という注意書き付きです。

あるタイミーさんがいて、従来から例えば毎月15回のシフトでスキマバイトをしていたとします。簡単化のためタイミー以外の所得はないものとして、消費支出も一定、シフトごとの給与も一定だとします。仮に所得が消費額(借金があれば、プラス返済額)を下回っていれば、その分、借入をします。もしお金が足りていれば、その分で既存の借入れを返済します。

一方、タイミー側は、この人の過去の勤務頻度などを見て、どれだけの融資枠とするか格付を決定します。過去のシフト数に応じて格付=融資枠が増減することになります。

仮にこの融資枠いっぱいまで借りても必要額が満たせなければ、この人はシフトを増やすことで対処します。また現在の借入残高が、タイミーの融資枠ぎりぎり(ここでは85%とします)であれば、やはりシフトを増やします。一方、仮にタイミーからの借入残高がゼロならシフトを減らします。このどちらにも当てはまらなければ、シフトは同じにします。

シミュレーション結果

ではシミュレーションの結果を見てみます。まずはパラメーターを変えた2つのシナリオを比較します。指標として債務/所得比、毎月のシフト数をとり、30カ月先までの推移を見ています。

健全シナリオと泥沼シナリオを考えました。個々のパラメーターは詳述しませんが(現実を踏まえた真剣なモデルではないので)、後者のほうが消費額は多く、毎月のシフト上限が高く、シフト増に対する融資限度額の感応度が高く、金利も高いという感じで設定しています。

まず健全シナリオの場合、消費額が小さいため、初期段階ではシフト数は減少し、債務もゼロです。しかしシフト減=所得減の結果、途中から借入を始めます。その返済負担もあり、18ヵ月目からシフトを増やし始めますが、この結果、債務指標も頭打ちとなり低下していきます。30ヵ月目までしか動かしていませんが、こういう低水準での債務指標とシフト数の上下サイクルを続けることになりそうです。

このシナリオではシフト上限を26回/月にしていますが、ピーク時でもこの上限以下のシフト数にとどまっていて、十分に生活を楽しめていることになります。タイミーから時々借入はしますが、無理な水準まで累積せず、低い水準で返済を開始しているので、タイミー融資はこの人の生活に役立っていると言えそうです。

一方、泥沼シナリオの場合、初期段階からシフト数と債務指標の急上昇が見られます。10ヵ月目ぐらいで両方ともピークとなり、その後も横一直線の推移となります。シフトは30回/月で推移しますが、これはこの人の上限シナリオです。毎月30日タイミー・シフトを入れている、つまり休みなしで働きっぱなしという状態ですが、それでも債務水準は減ってくれません。これでは借金返済のために休みも取らずにシフトを入れているという泥沼状態であり、タイミー融資のために生活が苦しくなった悲惨な人生です。

パラメーターが変わるとどうなるか

ではモデルの動きを決めるパラメーターを動かして、指標がどうなるかを見てみます。ここでは消費額、シフト・融資枠係数、最大シフト数、賃金、金利の変数を動かしてみます。ベースは上記の健全シナリオのパラメーターとして、そのうちのひとつのパラメーターを動かしたものです。

上で見たグラフのように、指標は上下動を繰り返す可能性が見られるので、100ヵ月のシミュレーションをしたうえで、最後の24カ月の指標を平均して、グラフに示しています。

実を言うと、パラメーターが増減すれば、それに応じて債務指標やシフト数も単調に増減する単純な関係が得られると想定していたのですが、妙に非線形な結果が出てしまいました。例えばシフト1回あたりの賃金の影響は想定通り、素直な動きですが、他はナゾに非線形な動きを見せています。

例えば消費額のパラメーターを増やしていくと、シフト回数はほぼ増えていくのですが、債務指標は16~17万円辺りで一度ピークになった後、低下します(もちろん、その間シフトは増えているので、頑張って働いて返しているのでしょう)。そして24~25万円辺りから再び上昇を始め、それ以降は250%程度でピークを続けます。

なぜこういう非線形な動きをするのか見直したところ、どうやらシフト増減の決定メカニズムが効いているようでした。

シフトは1回、2回という整数なので、他の変数との連続形で定式化するのではなく、ここでは「タイミーから借り入れても資金需要を満たせない」あるいは「借入残高が上限近くに達した」という場合にシフトを増やし、「借入残高がゼロ」になったら減らす、それ以外の場合は前期と同じシフトにする、という閾値系にしています。このため、不足額が小さいとシフト増につながらず借金頼りになり、不足額が大きいとシフト増になり、借金依存度が下がる、という逆転が部分的に起きるようです。

金利についても、年利12.5%から15%に増えたところで、急激に債務指標が低下するという動きになります。またシフト増が融資枠を引き上げる係数も、これが高まることで債務指標は悪化するのですが、0.5辺りで一度低下するという妙な動きです。

この辺り、ちょっと落ち着きが悪いのですが、まぁ、もともと「お楽しみ」で作ったラフな枠組みなので、こういうのも面白いかなと思って、リアルっぽい動きとなるような調整はしないことにしました。

こういう途中段階の逆転現象はありますが、大局的に整理すれば、シフト→融資限度額の関係を決める係数が大きいほど、債務が増える方向と言えそう。やはりタイミー本体とタイミーフィナンシャルのリンクが強くなるほど借金地獄に陥るとは言えそうです。

もちろん根本的にはタイミーさん側の消費額が大きいほど、借金地獄に陥る傾向が高まるという傾向は明らかです。まぁ、使い古された言葉ですが、「ご利用は計画的に」ということですね。

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