中間選挙が終わりました。まだ最終結果が出ていない議席もありますが、民主党の圧勝に終わったと言っていいでしょう。まだ大雑把なところしか分かりませんが、ちょっと整理をしておこうと思います。
予想を超えた民主党の圧勝
中間選挙前から、トランプ支持率が史上最低だとか、ゴリ押しで本来勝てる主流派候補が外されたとか、イラン戦争からのインフレに国民が怒っているとか、いろんな報道が出ていて、共和党には厳しい選挙になるんだろうなとは思っていました。
とはいえ、世論調査の正確さには懸念があるし、2回もトランプを選択したアメリカ人の良心なんて信頼できないし(!)、下院選ではゲリマンダーがまかり通っているし、海外に目を向けると、ボロ負けすると思っていたネタニヤフも踏みとどまったし、ヨーロッパでも右派ポピュリズム政党が伸びているし…なんて考えると、実は共和党が踏みとどまるんじゃないか、という懸念がどうしても拭えない状況でした。
しかしフタを開けてみれば、当初考えられていた以上の民主党圧勝でした。まだ最終結果が出ていない地区を除いて(一部は決選投票に進むかも)、上院は非改選含めて54対44(民主党系無所属2人を含む)、下院は253対162という圧倒的勝利でした。
議席が反対党にひっくり返ったのも、上院は7議席すべて民主党、下院は45議席のうち43議席が民主党という勝ちぶりでした。なかには、むしろ勝ち残るべきだった穏健共和党議員が負けたりと、ちょっと困るものもありましたが(メイン州のコリンズとか)。
当初はトランプが不正選挙を主張して、裁判に持ち込むなんて見方もありましたが、あっさりと負けを認めました(民主党が共和現職と同姓同名の候補を立候補させたアリゾナ上院の展開は読めませんが)。自分が負けるのは許せんが、共和党が負けるなら関係ないという究極の自己チューが明らかになったということですかね。
過去の選挙も含めて、民主党獲得議席と共和党獲得議席の差(プラスが民主党優勢)の推移を見たのが、以下のグラフです。集計中の州・選挙区については、現時点で得票数の多い候補を暫定的に勝者にカウントしていますので、最終的には異なる可能性ありです(他のグラフも同様)。また上院は3分の1ずつの改選議席のみに絞った比較です。
上院は案外、民主⇔共和で揺れ動く傾向がありますが、かなりの純獲得議席数となりました。2018年にも同様の議席を獲得していますが、これもトランプ1期目の中間選挙の年です。中間選挙では大統領与党に厳しいと言われますが、これは民主党政権期にも確認できます。オバマは2010年、2014年が中間選挙でしたが、ともに共和党勝利、バイデンの2022年も共和党勝利でした。
下院を見ると、1980~90年代は民主党が圧倒的有利でしたが、その後は共和党有利な傾向が続きます(この辺りの背景は、ゲリマンダー関連の記事でもちょっと触れました)。前回、大きく伸びたのはオバマ政権誕生の大統領選挙(2008年)ですが、今回はそれに匹敵する勝利だったと言えます。

民主党の純得票率の推移
各州レベルの下院選挙で民主党得票数と共和党得票数の差をとって、その投票総数に対する比率を計算してみたのが以下のグラフです。縦軸は2024年の値で並べてみました。民主党得票率が共和党を大きく上回るほど濃い青で、逆は濃い赤で示しています。
オバマ1期目頃にちょっと例外的に青が強い時期もありましたが、近年は共和党優勢な時期が続いていました。ところが今回は、全体的に青い傾向の州が増え、その色も濃くなっています。逆に赤い州では、その色が薄くなった傾向が見られます。
唯一の例外がアラスカ州ですね。まだ未確定の州(選挙区はひとつだけ)ですが、共和党候補が現状50%近くを得票、第2位の候補(得票率40%ほど)は無所属なのですが、民主党自体はこの人に投票するよう呼び掛けてきたらしいです。
問題は第3位の候補(得票率7%ほど)。民主党候補リストに載ってはいるのですが、何とこの人は現在、連邦刑務所に収監中(公職者への脅迫、爆破予告等)。民主党としては支持していないのですが、事故のような形で民主党立候補者のリストに残ってしまったらしいです。この辺り、本当にアメリカの選挙制度はよく分からん。こういう特殊事情の結果、共和党と民主党の得票率差が開いているわけなので、アラスカが全米の傾向に反して共和党支持を強めているということではなさそうです。

もう少し単純に2024年と26年で民主党の純得票率(民主党得票率-共和党得票率)を比較したのが、以下のグラフです。赤線が均等ラインです。
これを見ると、ほぼ軒並みすべての州で赤線の上、つまり民主党への投票率が上昇しています。アラスカは上で述べたような特殊事情です。前回、大きく共和党得票率が高かった州(横軸で大きくマイナスの州)でも、民主党の得票率が上昇し、今回は民主党得票率が上回った州(縦軸でプラス領域)も多く見られます。
例えば共和党の牙城と言われてきたテキサス州。2024年は20%程度の差で共和党が優勢でしたが、今回はなんとプラス領域に入っています(民主党得票数のほうが多い!)。
これは上院選挙の話になりますが、民主党のタラリコ氏の人気が、日本のニュースでも頻繁に報じられました。トランプ印の共和党候補に10pt差で勝ち、38年ぶりに民主党が上院議席を確保しました。

同時に行われた州知事選でも、2014年以来、知事を務めてきたアボット知事が敗れ、民主党知事になりました。アボット知事は、トランプの指示に従ってゲリマンダリングを行い、下院選挙区を共和党に有利なように引き直しましたが(5議席増の目論見)、それでも民主党の得票率上昇の影響は免れず、逆に1議席、減らしてしまいました。
ゲリマンダーが行われたいくつかの州で、得票シェアと議席シェアを比較したのが、以下の図。与党側では得票率シェアを大きく上回る議席シェアを維持する様子が明らかです。民主党ゲリマンダーのカリフォルニアを含め、やはり顕著ですね。今回、議席数を減らしたテキサスでも、実は得票数で共和党を上回った民主党が14議席と、共和党の24議席を下回っているわけで、やはりゲリマンダー恐るべしです。

トランプの終わりの始まり?
今回の中間選挙結果を受けて「トランプ・MAGAの終わりの始まり」的な論調も見られますが、どうなんでしょうね。確かにトランプ個人に対する見方が非常に厳しくなっているのは事実でしょう。
でも、今回特に投票行動に大きく影響したのは、イラン戦争以降のインフレ、特にガソリン価格の高騰ですよね。単純な思考実験ですが、仮にイラン戦争が短期に終わって、ホルムズ海峡の長期封鎖のような事態が起きず、ガソリン価格が上がらずにいたとしたら、果たしてここまで大統領支持率が下がり、共和党が大敗することがあったのかどうか。
実際、ベネズエラへの介入について、今は誰も非難していないと思うんですよ。
大統領ポジションを利用しての家族ぐるみの金儲けには、多くのアメリカ人が辟易しているとは思うものの、反DEI、反気候変動、関税、中国やロシアの強権政権への親和度などなど、こういう「トランプ的」な政策にアメリカ人がNOを突き付けたのかどうか、そこは分けて考えないといかんのじゃないかと思うんです。
今回、「民主社会主義者」と言われる民主党の進歩派も多く当選しましたが、この人たちが「意識高い系」の政策アジェンダを前面に出してくるようになれば、2028年の大統領選挙では、トランプの個人色を薄めたMAGA派(バンスか?)が政権を獲ったりする可能性が高まるでしょうね。
民主党のリードがギリギリだったら、民主党執行部も法案を通すためには、進歩派の賛成が必要になるので、彼らの顔色を窺うことが必要になります。しかし幸い、今回は民主党が圧倒的な議席数を獲ったので、進歩派の議員の賛成がなくても、議会を通すことが可能なはず。
そもそも今回の結果はトランプの否定であって、民主党支持ではないという見方も強くあります。事実、民主党への支持率は共和党支持率を下回っています。古いスローガンですが、くれぐれも「It’s the economy, stupid!」を肝に銘じて、国民の日々の生活を中心においた政策を進めてほしいものです。
