電気・ガスとガソリンの補助金格差。勝ち組と負け組は誰?

この10月で電気・ガス料金への補助が終わりましたが、一方でガソリン補助金は継続。冬にかけての電気・ガス補助金の復活、ガソリン補助水準の見直し等がある見込みですが、依然、その設計に差があるのも事実です。

そこに政治的な意図があるのかは分かりませんが、この補助金の扱いの差で助かるのはどんな人たちで、苦しむのはどんな人たちか、勝ち組と負け組を見てみようと思います。

エネルギー補助金の扱いの差

暑かった今年の夏も終わりました。政府は7~9月の間、電気・ガス料金には補助金を出してきましたが、来月請求の10月分からは料金が上がることになります。そこに加えて、先日、東電は原油価格高騰により、11月使用分は過去最高になると発表していました。まぁ、実際には去年までと同様、冬場に向けた電気・ガス補助金が再開されるようです。

補助金は夏場のエアコン需要に対応したもので(ガスはシャワー代か?)、10月以降の停止自体は理解できます。実際には「電気料金が高いからエアコンが使えない」なんてことのない大金持ちにも補助金を出しているわけで、対象を絞った給付のほうがいいのですが、まぁ、そこは置いておきましょう。

この一方で、ガソリン補助金は全く途切れることなく続いているし、その制度設計も全く異なります。どうもここが不思議なんですよね。

電気・ガス補助金は、固定単価の補助額を差し引く形なので、原油ガス価格が上がれば利用料金が上がり、消費者負担となります。しかし、ガソリン補助金は170円を超える分を全額補助、つまり原油価格が上がれば補助金も増えることになります。補助額は、現状では過去最高の52円/ℓになっているとか。2022年に最初に導入して以降の予算措置は累計9.0兆円以上、今年3月の再開以降だけでも1.2兆円に上るとされます。

ロシアのウクライナ侵攻や中東紛争のため原油価格が高騰する中、「どうぞ補助金つきの安い値段でガソリンをじゃんじゃん使ってください」という姿勢を頑なに維持している日本政府ですが、ようやく自民党が見直し提言を出しました。

とはいえ、提言内容は、12月以降、春先にかけて基準価格を5円ずつ引き上げるというもの。まぁ、消費減税の財源探しの一貫なのでしょうが、依然として補助金額固定ではなく価格固定型。中間選挙後に、アメリカとイスラエルのイラン攻撃が再開して原油価格が上昇すれば、その分の財政負担が増えるかもしれません。

見直し提言が出ること自体は正しいのですが、何で電気・ガス補助金の打ち切り時に、政権内でガソリン補助金の議論が出なかったのかが不思議。

とはいえ、その政治的思惑について何かを論じようという訳ではありません。電気・ガス補助金は一時停止、ガソリン補助金は微妙に基準価格を調整しつつ、同じ設計で継続するという扱いの差は、所得別、地域別にどんな勝ち組、負け組を生むのだろうかと思い、簡単にデータを見てみます。

なお灯油も補助金の対象なので(ガソリンスタンドで買うから?)、こちらも含めた4種類で考えます。

所得階層別の勝ち負け

まず所得階層別に、エネルギー料金が、どのぐらいの負担になっているのかを見てみます。以前、消費税の試算でも使った総務省の全国家計調査から「年間収入五分位階級別1世帯当たり品目別支出金額及び購入頻度」(長い!)という表を見てみます。

これは年間収入で五分位ごとに世帯を分けて、どのような品目にいくら支出しているかを比べたものです。対象世帯を勤労世帯に限ったものと、非勤労世帯(多くは高齢者ですね)も含む全世帯の区分もあります。

ここから各所得階層別に消費支出全体に占める電気、ガス、ガソリン、灯油代の割合を示したのが以下のグラフ。所得階層Ⅰが最も貧しく、Ⅴが最も裕福な世帯を示します。

まず、いずれの世帯を見ても、電気代が最も負担が大きい点は共通です。また勤労世帯のⅡとⅢに微妙な逆転はありますが、概ね所得階層が低いほど負担が大きいという傾向も見られます。この傾向はガス、灯油料金でも同様で、貧しい世帯ほど支払いが生活には負担になっているといっていいでしょう。

問題はガソリン料金。総家計で見た場合、第Ⅳ分位と第Ⅴ分位で逆転しますが、所得階層が上に行くほど、多くの割合をガソリン代に支払っています。これは消費支出に占める「割合」なので、「消費額」から言えばもっと差は健著になります。

確かに地方部ではクルマは必需品で、ガソリン代が高いままでは日々の生活にも困るという層はいるのでしょうが、やはり傾向的にはガソリンは高所得者ほど支出割合が高くなる贅沢品と見たほうがいい感じ。

まぁ、恐らく政府側の考えとしては、金持ち優遇というよりは、産業界の要請に応えたというほうが正しいのでしょうけど、でも、このグラフをこのまま見ると、貧困層の生活支援という考えは全くないと言われても仕方ないですね。

地域別だとどうなる?

同じ家計調査には「都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり年間の品目別支出金額」という、これまた長ったらしい名前のデータもあります。都市階級というのは、大都市、中都市、小都市A、小都市B・町村といった人口規模による区分、地方というのは関東、近畿といった区分です。この辺は置いといて、以下では県庁所在市+その他の政令指定都市(全52市)の支出データを見ます。

各市の消費支出に占めるエネルギー支出の割合を計算し、プロットしたのが以下の図です。横軸はガソリン・灯油代、縦軸は電気・ガス代の割合です。性格的には灯油は電気・ガスに近いと思いますが、補助金対象かどうかでガソリンとまとめて考えます。

点線が全国平均です。また電気、ガスそれぞれが全国平均より高いか低いかで、各都市を色分けしています。

水平線より上は全国平均に比べ電気・ガス代への支出割合が大きい市、垂直線より右はガソリン・灯油への支出割合の大きい市になります。つまり、右下の領域はガソリン・灯油補助金からの恩恵が高く、電気・ガス代補助金が終わっても影響が低い「勝ち組」ということになります。逆に左上は、ガソリン・灯油補助金からの恩恵が小さく、電気・ガス代補助が終わると苦しい「負け組」です。

やはり垂直線の左側には、東京都区部、大阪市、名古屋市、横浜市…といった大都市圏、周辺都市が多く並びます。やはり公共交通機関が発達しているので、自家用車用のガソリン需要が低くなるのでしょう。もちろん所得が高いため、負担比率が低くなるという要因も無視できません。

一方、水平線の上の都市は大半が赤かピンク(両方高いor電気高い)、水平線の下は大半が青か緑です(両方低いor電気低い)。電気代負担が高いか低いかが、両者を分ける要因として大きいようです。九州は分かれるのですが、概ね東京電力、関西電力、中部電力管内が下(甲府市=東京電力、浜松市=中部電力は例外)、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、沖縄電力が上に入ります。もちろん、それが電力会社の料金のせいか、地理・自然条件による問題かは何とも言えませんが。

勝ち組には熊本、宮崎、鹿児島、和歌山、長野、前橋の6市が入りました。この辺りは電力料金の支出面で有利な地域の中で(鹿児島はピンクだが、まぁ、ほぼ水平線近辺)、クルマ依存が強い地域なのでしょう。

逆に負け組には、仙台、那覇、長崎、松山、岡山、静岡、京都、大阪が入ります。松山と岡山は、ほぼほぼ垂直線付近なので、微妙ですが。仙台、那覇、長崎辺りは、地方の中では比較的人口が集中したコンパクトな都市で、ガソリン代が抑えられるということなんでしょうか。不思議なのは京都、大阪といった西の大都市。関西電力エリアなのに電気・ガス代負担が大きいというのは、つまりガス代が負担ということか。古い家が多くて効率が悪いということなのかな。知らんけど。

最大グループは右上の領域で、電気・ガス代、ガソリン・灯油代とも負担が高い地域ですが、大半は電気・ガス代とも全国平均より高いか、あるいは電気代のみ高い(ガス代負担が低い)地方都市グループです。持ち家・広い家が多く、通勤・買い物はクルマ、また冬は暖房で電気を使う典型的な地方都市ということでしょうか。

まぁ、上記のような勝ち組、負け組作業はお遊びに過ぎませんが、やはり補助金縮小、制度の見直しは必要でしょう。

消費税減税が不可避であれば、その財源探しが必須。小林政調会長によれば、ガソリン補助金で100数十億円/日規模の支出が続いているようですし、これまでも基金が枯渇しそうになれば、補正予算が充てられてきました。結局、それは赤字国債で賄われています。それで「消費減税は赤字国債に頼りませんから、ご心配には及びません」なんて言われても、債券市場は納得しないでしょう。

しかも、ガソリン補助金の恩恵は燃料を多く使う世帯や事業者に偏っています。地方の車依存世帯、低所得層、また産業でも零細事業者(農業、漁業等)など、原油価格高騰に対して脆弱な層への直接支援に移行しないと、単純に財政資金の無駄というべきでしょう。

今後の見直し、どうなりますかね。

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