日本人働かない問題?

「働き方改革」の必要性が叫ばれ、時間外労働規制などの改正が行われてきた日本ですが、最近は逆に人手不足の強まりから、働きたい人は働いてもいいじゃん、という声も聞こえてきました。

日本人は本当に働きすぎなのか、もしかすると、実は日本人は働いていないのかも?ちょっとデータで比較してみます。

主要国の年間労働時間の推移

4月も2週目が終わりました。4月に配属された新人さんの中には、そろそろモームリに依頼した人たちも出ているのでしょうか。一方、上司の皆さんは、自分の指導がパワハラと認定されないか、日々悩んでいることでしょう。

時間外労働の規制が行われる中、現場では人手不足倒産等という声さえ出始めていて、なかなか「程よいバランス」というのは難しいようです。この辺りの問題、正確に議論する能力は私にはないのですが、いくつかの国を抽出して、過去、年間の労働時間がどう変化してきたかを比べてみようと思います。Penn World Tablesというデータを使います。

以下は日本、アメリカ、中国、韓国、台湾、フランス、ドイツという7ヵ国で1950年頃からの年間労働時間の推移を見たものです。とにかく目立つのが韓国。1970年代ぐらいまでは、断トツの労働時間ですが、80年代半ば以降、これが急激に低下しています。足元では中国、台湾よりも短くなり、アメリカの労働時間に近づいています。

日本は韓国ほど極端ではありませんが、それでも90年代に入るころから低下をはじめ、今では実はアメリカ人より働いていません。90年頃を境にした急降下はバブル崩壊と不況により、企業も残業代を払えなくなっていったことの表れでしょうか。しかし2013年からのアベノミクスで状況がかなり改善して以降も、この低下傾向は変わりません。ただ高齢者の就労が増えたり、女性のパート労働が増えたりといった構造的な変化もあることは留意すべきですが。

台湾は微妙に低下傾向があるとはいえ、ほぼ横ばいというところ。中国もこの10年余りで見れば、若干の低下傾向にはありますが、それでも総労働時間は非常に高い水準で高止まりしています。

まぁ、ヨーロッパ諸国は労働規制も厳しくて、労働時間は短いだろうなという想像はつくのですが、独仏の継続的な低下傾向も見事ですね。ドイツ人なんてヨーロッパの中では勤勉で働き者というイメージでしたが、実はフランスよりも労働時間が短いというのも衝撃的です。日本より人口も少なく、労働時間も短いドイツが、GDP総額で日本を上回っているというのも、なかなかにキビシイものがあります。

何となく、こういうグラフを見てみると、果たして日本人はそんなに働きすぎなんだろうかと疑問も芽生えます。もちろん、こういうのはミクロの問題を全く捨象した平均の数字です。上述の通り、高齢者の就労増加、女性のパート労働増加といった構造的な変化もあるはず。加えて、シングルマザーで複数の職を掛け持ちしないと生きていけないとか、子供の教育費を賄うため残業の多い職場を止められないとか、個別にはいろんな問題があると思います。これだけで「日本人、もっと働け」と短絡的に結論できないのは言うまでもありません。

世界全体での位置づけ

では、ここでもう少し広い範囲の国で、1970年から2023年の労働時間の変化を見ます。1970年を比較対象に選んだのは、例えば1950年や60年にすると、データが揃う国が少なくなるためです。結果、47ヵ国のデータとなりました。

まず単純に2つの年での労働時間を比較すると、1970年時点のトップは韓国、最下位はポルトガルでした。日本は真ん中より少し上というポジションで、中国よりは短いものの、そう大きな差はありませんでした。順位の上の方には、香港、タイ、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、フィリピンといったアジア諸国が並びます。

一方、下位のほうを見ると、スウェーデン、イギリス、ルクセンブルグ、オーストリア、ノルウェー云々といったヨーロッパ諸国が多く、やはり所得水準の高い国々は、そうあくせく働かないんだろうなという様子。アメリカも国際的には労働時間の短いグループに入っていたと言ってよさそうです。ヨーロッパの中でも、イタリア、フランス、スペイン、ドイツといった国は、アメリカよりも労働時間が長いという時代でした。

これが2023年になると、トップはパキスタン、これにコロンビアがわずかな差で続きます。両国は1970年にも3位、4位でしたので、長時間労働の常連組と言ってよさそうです。一方、先に見た通り、1970年トップの韓国は労働時間を大きく短縮し、20位になっています。アメリカは22位と、ほぼ真ん中、そしてドイツが最下位となってしまいます。逆に1970年最下位のポルトガルは、2023年には25位と、ほぼ真ん中に上昇しています。この背景は全く不明です。

そして日本、2023年には30位にまで落ちました。1970年時点でも決して韓国のような長時間労働の国ではありませんでしたが、真ん中より下となると「勤勉な日本人」という国際的なイメージとは、どうも違ってしまいます。まぁ、サービス残業が適切にカウントできていない可能性もあるかもしれませんが。

同じデータですが、少し見せ方を変えてみます。横軸に2023年の労働時間、縦軸に1970年からの変化幅をプロットしてみました。

大半の国が労働時間を短縮させていますが、カンボジア、バングラデシュ、中国、インドネシア、ポルトガルは、長時間労働になった数少ない国です。最初の4カ国は、恐らく経済構造自体の近代化という要因もあるでしょう。昔は労働時間という概念が当てはまりにくい農業部門が大きかったのが、工場やオフィスでの始業時間・終業時間がある働き方になったのかもしれません。頑張れば給料が増えるので、喜んで長時間働くという側面もあるかもしれませんし、逆に低賃金の工場労働者としてこき使われるという側面もあるかもしれませんが。

これら以外のほとんどの国は、大なり小なり、労働時間を短くしています。中でも、滅茶苦茶に顕著なのが韓国。年間で1000時間ほども、労働時間が短くなっています。仮に年間の労働日数が250日だとすると、1日当たり4時間の短縮。これだと、ちょっとあり得ないのですが、週休2日の定着とか、そういうところもありますかね。日本も1970年頃とかは、土曜日は半ドン(ってコトバ、もう知らんか)でしたからね。

日本は韓国ほどではありませんが、やはり労働時間が顕著に短くなった国です。アイルランド、ドイツに次ぐ変化幅で、フランス、アイスランドとほぼ同じという感じ。今は総労働時間で欧州諸国より長いポジションにいますが、このまま続けば、より短い1500時間グループに入っていく可能性もあるのでしょうか。

雇用者数の伸びも併せると

最後に念のために雇用者数の伸びと合わせてみます。仮に労働時間が減っていても、それを補って雇用者数が伸びていれば、生産力の点では問題は少ないと言えます。

これで見ても、日本はあまり高く伸びているとは言えません。横軸の雇用者数の伸び(1970年からの53年間の伸び。年当たりではありません)で見ても、日本はドイツ、オーストリアと並んで一番下のグループ。シンガポールのように5倍以上に伸びた国は特別として、アメリカが100%、カナダやオーストラリアが150%といった労働供給の増加を見せています。こういう先進国は出生率も低い傾向にあるので、この労働供給増は移民のおかげだろうと思われます。

韓国はこの間で見ると200%近く、中国も100%超の伸びですが、日本以上の少子化に直面しているので、これから先となると、日中韓はヘタすると雇用者数ではマイナスに落ち込む可能性があります。

となると、労働時間をもっと増やすか、労働生産性をもっと上げるか(どうやって?AI導入で可能なのか)、定年年齢を引き上げて高齢者にもっと働かせるか、女性にパートではなくフルタイムで働いてもらうか(103万円、178万円の壁撤廃で可能か?)。

これらができなければ、移民をもっと受け入れるかという話になりますが、昨今のSNS政治を見ていると、これは反発が大きそう。どうすんでしょうね。でも街を歩いて見ても、コンビニ店員だけじゃなく、建設労働者とか外国人は非常に増えています。茨城県の不法就労者密告制度が話題になってますが、老人ばかりの農家は、どうやって収穫すんだろう。

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