このところ、毎年夏になると「今年は異常気象だな」と文句を言っている感じ。もう日本の夏は亜熱帯になっていますが、ヨーロッパも同じか、もっと悪い状況。エアコンが設置されていないこともあり、各国で一万人規模での「超過死亡」が起きているとか。ちょっと世界各国の夏の気温変化を辿ってみます。
温暖化が進む世界
「地球温暖化」の脅威が言われ始めて数十年ですが、最近の夏の暑さは異常。日本では気温の上昇に加え、海水温の上昇が台風の巨大化や大雨(線状降水帯など)を引き起こしています。全く地震だけでも大変なのに、俺たちが一体何か悪いことしたのかと神様に文句も言いたくなります。
夏の気温上昇はヨーロッパでも顕著で、今年も一万人規模での高温による「超過死亡」が報告されています。以前、ニュースで屋外労働者の健康被害防止のため、早朝への作業時間シフト、日除けテントや冷水の提供等が義務付けられたとか見た記憶があります。日本でおなじみのファン付き作業服を広めたら、一気に人気になりそうな気がします。赤字続きのクールジャパン機構、こっちも頑張ってくれませんかね。
まぁ、もともとヨーロッパは夏でも気温は低めで、6~7月だって上着を着て、夜なんかはストールをする人もいるぐらいでしたから、エアコンの設置率も低いようです。そもそも主要都市ではエアコンの室外機が景観を損ねるとか、過剰な電力消費で温暖化を進めるとか言って、エアコンの設置がなかなか認められないらしい。
「意識高い系」の人たちは、自分なりの正義感から「世の中はこうあるべきだ」という考えでモノ申しているのでしょうが、今、熱波で苦しんでいる人たちからすれば「俺の命より、町の見た目のほうが重要なのかよ」と反発するのは当然です。
既にフランスの次の大統領選をにらんで、エアコン設置問題が左右両派の論点になっているようですが、どうなりますか。個人的には、あまり「意識高い系」の主張を出し過ぎるのは、戦略的には悪手な感じが拭えないのですが。ルペン大統領なんて、ちょっと見たくないんだが。
各国の今年夏の高温
まずいくつかの国の今年の夏の状況を見ておきます。Open Meteoというサイトから、主要国の首都の日次最高気温データを取得しました。経度・緯度を指定して取得したデータなので、公式記録と若干の齟齬があるかもしれません。またアメリカやロシアみたいに広大な国土を持つ国で、果たして首都(ワシントン、モスクワ)の気温だけでいいのかという問題はあるでしょうが、まぁ、気楽なブログなので許してください。
下のグラフは、今年の夏(6~8月)の日次最高気温の分布です。35度と40度のところに線を引いています。
これ見ると、カナダは快適そうです。まぁ、首都トロントの緯度は北海道の旭川ぐらいですから、夏の気温が抑えられるのも不思議ではありません。逆に悲惨なのはインド、40度越えの日も並んでいます。ま、これも不思議ではありませんし、住民もそれなりに慣れているでしょう。
日本は35度越えの日が少しあるくらいでした。日本全体で言えば酷暑日も何度かあったのですが、今年の東京の夏は梅雨入り前の5月は暑かった一方、梅雨以降、それなりに抑えられていた印象でした。
これに対してヨーロッパ、特にイタリア、フランスは厳しかった様子が見られますね。まぁ、イタリアは普段からそれなりに暑いのでしょうが、フランスで35度以上がこれだけ続き、さらには40度超えの日も散見されるというのは、エアコンなしでは普通に生きていくのも厳しい夏だったと思われます。

1990年代と2006年(8月まで)の日次最高気温を比較したのが以下のグラフ。黒線が1990年代平均、赤線が2026年、棒グラフがその差です。ちょっと見にくくなるので、上のグラフからいくつかの国を落としました。
これを見ると、日本は気温の上振れが見られたものの、欧州に比べると小幅とは言えそう。中国、韓国も同様です。アメリカは日々のブレが非常に大きいのですが、夏については今年が特に高いという感じには見られません。
一方でヨーロッパは、今年の7月、8月の気温はかなり高かったことが見て取れます。イタリアはほぼ恒常的に上振れして、上昇幅は10度弱といったところ。ドイツ、フランス、イギリスはイタリアほど恒常的ではなく上下動はあるものの、上昇幅は10度を超えることも頻繁にあり、上昇幅という意味ではさらに厳しかったようです。

主要国の気温上昇傾向
少し国の範囲を広げて、世界主要国(G20)の気温の変化を眺めてみようと思います。上と同じソースから1950年以降の日次データを使って、年間で最高気温が真夏日=30度以上だった日数(インドとサウジは45度以上)を比較したのが以下の図です。
インドでは特に変化は見られませんが、サウジでは近年の最高気温上昇は見られると言っていいでしょう。まぁ、とはいっても我々からすれば45度以上なんて、認知できる範囲外という感じで、何も感じないと思います。現地の人は、やはり「今年は暑いよなぁ」とかブチ切れているのか、本心を聞いてみたいところ。
暑い国で見ると、インドネシアは明らかに近年の増え方が顕著。中国やトルコも、もともと30度以上は頻出していましたが、やはり2000年代に入って以降のほうが、その日数も多くなっている感じが見られます。
一方で変化が見られないのが、カナダとアメリカ。カナダ人はともかく、アメリカがこれでは、「気候変動はフェイクだ」という大統領が生まれるのも仕方ないか。竜巻とかハリケーンとか、別の指標で温暖化の影響が顕著に出ていることを祈ります(祈ってはいけないんだが)。
これに対し、もともと30度越えが多くなかったヨーロッパ。フランス、ドイツ、イタリアでは、以前も時々あったものの、やはり近年はそれが毎年のように発生し、しかも日数も増えています(特にイタリアは健著)。アルゼンチン、ブラジルもその傾向はあり、高地のためかつてはほとんどなかったメキシコでも近年は健著に増えています。
また日本はここ数年、その日数は突出して増えています。韓国もこれに近い感じでしょうか。これは「異常気象だ」と毎年思う訳です。
まぁ、こういう高温の日が、年間数日であれば、その日は公共の図書館で過ごしてください、でもいいのでしょうが、何十日にもなるとすれば、やはり自宅へのエアコン設置は必須でしょう。いや、これが普通にできる日本人でよかった。

最高気温の変化幅
グラフは割愛しましたが、各国の気温変化を見ると、1970年代頃が最も低かったように見えます。実は1970年代は、実際に世界の平均気温が低下傾向にあり、「地球寒冷化」や「氷河期到来」が懸念されていました。工業化に伴う大気汚染の微粒子が太陽光を遮り、地球を冷やすと考えられていたようです。まぁ、今から考えると、笑ってしまうような間違いですが。
ということで、1970年代と2020年代で夏の最高気温がどう変化したかを比較します。年数を合わせるため、1970~76年、2020~26年の7年間で比べます。また北半球は7月と8月、南半球は1月と2月を夏とします。左パネルは期間中の日々の最高気温の平均値、右パネルは期間中で最も高かった記録1日を抜き出して比較したものです。
まず左パネル(期間平均)で見ると、インド、アメリカ、ブラジル、カナダ辺りは大きな変化はありません。しかしドイツ、アルゼンチン、中国、韓国、南アは1度台の上昇、そのほかの多くの国は2度台の上昇が見られます。特に顕著に上がっているのがイタリア。70年代の28.3度から20年代には33.7度へと5度強も上昇しています。因みにイタリアだとエアコン普及率は7割程度とされているので、イタリア人は暑さで亡くなるという人は、フランスなどに比べると低いようです。
日本も70年代はイタリアと同じく28.0度でしたが、2020年代は30.9度。イタリアほどの上昇は避けられていますが、この中では2番目の上昇幅です。変化幅としては、メキシコ、ロシア、トルコが日本に続きます。
メキシコの夏の気温が低いのにちょっと驚きましたが(ほぼイギリスと同じ)、首都メキシコシティは2000メートルの高地にあるので、この程度で済んでいるのでしょう。ブラジルも首都ブラジリアは1000メートルなので、この程度なのですが、サンパウロやリオだともっと違うのでしょう。
次に右パネルで、単純に最高気温1日を抜き出して比較すると、やはり特段の異常高温だった日もあるのでしょう、むしろ下がっている国もいくつかあります(インド、中国、南ア、カナダ)。しかし、それ以外の年では、やはり大幅な上昇が見られます。
特に顕著なのがイギリスとオーストラリアで、それぞれ6.3度、6.1度の上昇が見られます。平均で見た通りイタリア(4.1度)も大きいのですが、フランス、ドイツといった「涼しいヨーロッパ」でも顕著な上昇が見られます(それぞれ5.2度、4.1度)。7年という期間の平均で見れば、ある程度の落ち着いた上昇にとどまっていても、その中で無茶苦茶に暑い日が数日間あり、この時に高齢者などが死亡する、という感じなのかもしれません。
しかし、こうやって主要国の夏の最高気温が40度超え、あるいは近くということが恒常化していけば、もう北半球で夏のオリンピックとか絶対にできなくなりそう。最後の可能性は、アメリカの都合を聞いて8月にやるんじゃなく、10月に移すことだがなぁ。


