この6月頃から株価の下げがきついですね。理由は半導体株の調整ですが、取引時間中の値動きを見ても完全に韓国株に引きずられている感じがして、どうも癪に障ります。老後資金をNISAに投資している高齢者も多いと思いますが、不安でしょうね。
彼らは取引銀行や信用金庫に勧められるままに投資信託商品を買っているケースも多く、ちょっと金融機関の助言力が気になるところ。金融機関により顧客の運用成績に差があるのか、金融庁データを見てみます。
退職金狙いの銀行営業
NISA口座の開設も順調に伸びているようで、本当に一昔前とは様違いです。正直、私も「株なんてバクチに手をだすもんじゃない」という世代であり、少し前まで自分が証券口座を開くなんて、思ってもいませんでした。勤務先でiDeco導入時に受託会社のセミナーがあったときは、私を含めて多くが「利回りが低くても、リスクを避けたい」という方に手をあげていたのが懐かしいです。
年齢層が高くなると、退職金狙いの銀行営業が「落とし穴」。退職金が入ったことは給与振込先の銀行にはすぐに分かりますからね、その途端、営業電話が入ります。「〇〇会社様だけの特別金利の定期をご用意しております」とか言って銀行に呼び出し、支店長が挨拶したりして持ち上げて、結局、コストの高い投資信託やラップ口座、外貨建て保険やらに誘導され、有り金を巻き上げられるという悲話は巷にあふれています。
この辺りは金融庁もご懸念のようで、「投資信託の共通Key Performance Indicators」というものを事業者ごとに公表しています。PDFでの要旨、グラフだけでなく、ちゃんとエクセルで個別機関ごとにデータも公表してくれていて、実に使い勝手のいいデータです。金融庁、ナイス。他の役所にも見習ってほしいものです。
以下では直近の2025年3月末データで、少し遊んでみようと思います。
業態別の事業者数
直近データで報告のある金融事業者は252社、業態の大分類で都市銀行、地方銀行、保険会社、協同組織金融機関、金融商品取引業者、その他となります。協同組織金融機関というのは信用金庫や労金、農協、漁協など、金融商品取引業者は証券会社などですね。
「その他」というのは実は1機関のみで、日本郵便です。グラフを作る際、日本郵便だけのためにひと区画を確保するのが無駄なので、勝手に保険会社に分類します。報告対象の保険会社は6機関のみ、なかには「北海道建物」という「何で?」というのもあるので(小分類では「乗合代理店」となっている)、まぁ、追加の小分類として日本郵便を入れても罰は当たらないでしょう。
このベースで各業態の金融事業者数は以下の通りです。最多は金融商品取引業者:第一種金商業者で72機関、次いで地方銀行:地方銀行で55行、協同組織金融機関:信用金庫と地方銀行:第二地方銀行がそれぞれ34行で続きます。第一種金商業者というのは、いわゆる証券会社で、皆さんお使いの野村證券とかSBI証券とかですので、これが最多というのは感覚的に分かります。
もちろん、それぞれの事業者で顧客数は大きく異なると思うので、投資信託の世界で例えば都銀の存在感がないとか、そういうことでは必ずしもありません。

損益区分別の顧客比率
まず業態別に「運用損益別顧客比率」の比較を見ます。数社しかない業態には箱ひげ図は意味がないのですが、その辺は大目に見てください。またこの運用損益は初回購入時以降の累積リターンらしいので、例えば大昔に買って順調に育ったオルカンと、去年買ったばかりのオルカンとでは、違う成績になるという性格のデータです。
50%以上という高い運用成績の顧客が多いのは金融商品取引業者:投資運用業者、次いで都市銀行:信託銀行、その他の銀行ですね(後者2タイプは数が少ないので、比較もしにくいのですが)。一方で成績が悪い(特に0~▲10%層が多い)のが共同組織の3形態、地方銀行もあまり芳しくない様子です。
投信運用業者というのは、顧客が自分で投資対象を選ぶ証券会社タイプというより、〇〇アセットマネジメントのように事業者側に一任して運用してもらうタイプ。顧客側も金持ち層が多く、かなりリスクも取りつつ高いリターンを狙うので、こういう結果なんでしょう。
これは必ずしも各事業者の運用能力の差ではありません。投資運用業者を除けば(他の証券会社などでも、一部はファンドラップなどありますが)、彼らはいろんな投資商品を揃えて顧客に提示するだけ、そこから顧客が商品を選ぶので、むしろ顧客側の差と言っていいかもしれません。
とはいえ、信金やら地銀やらだと、あまり金融知識のない高齢のお客さんに対し、「親身な姿勢」の行員が(あくまでカッコ書きです)、あれこれ相談に乗ってあげる、という構図が想定されます。お客さんの資産を守る、育てるよりも、銀行にとって手数料が高くてありがたい商品を優先して勧める、なんてことがないとも限りません。つまり金融機関側の助言の質とも言えます。ここでマイナス成績が多いのは、ちょっと辛いところです。

業態ごとのコスト、リスク、リターン
投資ではリターンだけでなく、コスト、リスクも併せて考えましょう、というのは常に聞くセリフ。以下のグラフは金融庁のパワポ資料に載っているのと同じですが、これら金融事業者別のリターンをコスト、リスクと対比させたグラフです(いずれも人気上位20商品の残高加重平均)。
ここでのリターンは、さっきとは違い過去5年間のリターンの年率換算のようです。またリターンから、信託報酬は控除していますが、購入時手数料は控除していません。一方、コストは信託報酬+購入時手数料の1/5で計算しているようです。信託報酬は毎年かかるが、購入時手数料は初回のみということで、この調整をしているのでしょう。
バラつきがあるとはいえ、リターンとリスクの間には一定の相関関係がありそう。と言っても同程度のリターンに対しリスクの幅は5%程度ありそうなので、この辺りは安定的な資産形成のためには、うまくお客さん(特にリテラシーの低い高齢者)にアドバイスするのが金融機関の役割でしょう。
問題はコスト。こちらはあまり正の相関があるようには見えません。特にリターンの高い方では、コストの幅が広がるような姿が見られます。もちろん投資家の中には、信託報酬が高くてもハイリターンのアクティブ・ファンドを積極的に狙う人もいます。自分で分かってそういう商品を選んでいるならいいのですが、そういう理解なく「何となく勧められた商品を買っちゃった」という人には悲劇です。
人気のオルカンなどは購入時手数料ゼロ、信託報酬0.05%台だったりする中、1%、2%という商品を選ぶお客さんが多いというのは、どういう営業をしているんだと疑いたくなります。

業態別にコスト、リスク、リターンの分布を見てみます。意外にも(失礼か)低コスト・低リスクで高リターンな傾向が強いのが、協同組織:労働金庫です。金融商品取引業者:投資運用業者は、低コスト・低リスクですが、リターンでは少し見劣りしています。
逆に高コスト・高リスク・高リターンなのは、金融商品取引業者:第一種金融業者。この辺りは、かなりリテラシーの高い投資家が自分で選んで買っている印象なので、何となく納得できる感じはします。
また地方銀行はいずれもコスト、リスクが高い感じがします。

同じデータを少し違う形で整理します。全252業者の成績をそれぞれ上位,中位、下位の1/3ずつに分けて、コスト、リスク、リターンを相対評価し、業態ごとにそれぞれのグループに何社が入るかを示したものです。
金融商品取引業者では高コストに多く分布、協同組織金融機関は低コスト、地方銀行は中コストという傾向が見られます。また、それぞれ高コスト・高リスク・高リターン、低コスト・低リスク・低リターン、中コスト・中リスク・中リターンが最多なので、この辺りは業態の方針の現れと考えていいのでしょうかね。
証券会社・運用会社の主な顧客はハイリターンを望む投資家、信金・労金は地域の高齢者や零細事業主、地銀は地方の中小企業というのはステレオタイプな見方かもしれませんが、仮にそうだとすると、この傾向はうまく顧客の嗜好に沿った助言をしていると評価できそうに思えます。
でも、その中でも高コスト・高リスクの信金や地銀があるのも事実。データは金融庁から公表されているので実名を出してしまうと、高コスト・高リスクの「外れ値業者」としては、おかやま信用金庫、地方銀行では大東銀行、滋賀銀行、福井銀行です。
因みに一番悪い高コスト・高リスク・低リターンは1社、一番優秀な低コスト・低リスク・高リターンには3社が入りました。前者は大山日ノ丸証券、後者は中国労働金庫、長野県労働金庫、新潟県労働金庫といずれも労働金庫でした。ろうきん、やるなぁ。

シャープレシオで比較
この3指標をまとめて表現できるのがシャープレシオ=(リターン-コスト)÷リスクです。ただし金融庁データのリターンはコスト控除済なので、リターン÷コストでいいのだと思います(多分)。金融事業者の大分類別に分布を示したのが、以下のグラフです。
保険会社は数が少ないので、ちょっと置いておくとして、中央値ベースでは高い順に金融商品取引業者、都市銀行、地方銀行、共同組織金融機関となります。ただ金融商品取引業者は中でのバラつきが非常に大きく、最高も最低もここです。まぁ、ここは分かって、こういう商品を選んでいる顧客も多いので、納得できると言ってもいいでしょう。
因みに上位5事業者を見ると、楽天証券(第一種金商業者)、リスクマネジメント・ラボラトリー(乗合代理店)、エフピーサポート(乗合代理店)、三菱UFJアセットマネジメント(投資運用業者)、極東証券(第一種金商業者)となっています。
逆にワースト5事業者を見ると、鎌倉投信(投資運用業者)、マネックス証券、中原証券、長野證券(いずれも第一種金商業者)、岐阜信用金庫(信用金庫)、でした。信用金庫がワーストに入るのは、あまりよろしくない結果。
協同組織と地銀でも中央値が1を何とか上回っているので、まぁ悪いとは言えませんが、ちょっとモノ足りないと言っていいでしょう。特に1を切る機関は、お客さんにちゃんと商品選びの助言ができているのか、もう少し反省した方がいいんじゃないかなぁ。

