バヌアツの法則?日本の地震の先行指標はあるのか、という話

4/20、東北地方でマグニチュード7.7の大きな地震があり、津波警報も出る等、かなり不安になりました。今回、ちょっと気になったのが、南太平洋のバヌアツで大規模な地震があると、2週間以内に日本でも地震が起こるという「バヌアツの法則」なる都市伝説。

まぁ、地震の予測は不可能と学者先生が言っている中、そんな簡単な予測法はないだろうと思いつつ、ちょっとデータで確認してみようと思います。

やはり日本は地震大国

今年は熊本地震から10年、東日本大震災から15年といった節目の年。色々、追悼行事等の報道もされる中、今週4/20には東北地方でマグニチュード7.7の地震がありました。幸い、大きな人的被害はなかったようですが、津波警報が長時間にわたって出され、また後発地震注意情報も出されるなど、かなり不安になってしまいました。

以前、南太平洋の島国バヌアツで大きな地震があると、その2週間以内に日本でも大地震が起きるという「バヌアツの法則」という言説を見たことがあります。実際、今回の地震の少し前、インドネシア(4/1)、バヌアツ(3/30)、トンガ(3/24)でM7超えの大規模な地震があり、日本で起きなきゃいいがなぁ、と思っていた最中のことでした。今回は2週間の枠はちょっと超えてしまいましたが、何となく気になってしまいました。

日本に住んでいる限り、地震リスクからは逃れられません。首都直下地震やら南海トラフ地震やら「今後30年以内の発生確率〇%」みたいのがあり、皆さんを不安がらせています。去年、大流行した「7月5日」の予言なんてのも、こういう不安心理の大きさが背景でした。

ざくっと各国の地震の発生頻度を見てみようと思い、アメリカ地質調査所(USGS)の地震データを引っ張ってきました。左パネルは1900~2026年(4/20まで)のマグニチュード6以上の地震の発生回数を国別に見たもの、右パネルは上位3カ国について、毎年の発生回数の推移を見たものです。アメリカの研究所なので、アメリカは州ごとになっており、トップ10にはアラスカが入っています。

因みにデータでは、例えば「Japan」と「Japan region」、「Vanuatu」と「Vanuatu region」のような区分が幾つかの国であり、どうやら、その国の領海内だが地理的に離れた島嶼部などは「region」としているみたい。ただ日本の場合、一部で北海道がregionになっていたのは修正し、また伊豆諸島もregionになっていたので、迷いましたが修正しました。南海諸島などはregionのままにしていますが、素人考えなので正しくないかもしれません。

またロシア関係だと「千島列島Kuril Islands」もロシアの国名なしに出ています。これをロシアに含めてもいいのですが、「いや、北方領土は日本固有の領土だ!」という考えもあるので(汗)、これはロシアに含めていません。もう少し真面目な話として、ロシアの領土は広いので、本当はアメリカのように地域別に区分した方がいいのでしょう。経度・緯度データもあるので、本職の方々なら適切に区分しなおして分析するのでしょうが、とても私にはそこまでできません。

これだとトップはインドネシアの1279回、次いで日本の1207回、PNGの987回などとなっています。その後、ロシア、アラスカ、フィリピン、バヌアツと、お馴染みの名前が並んでいます。やはり日本が地震大国と言われるのは、これをみると当然。正直、もっと太平洋島嶼国のほうが多いかと思っていて、ここまで世界のトップとは認識していませんでした。

また年毎の発生件数で見ると、所々で日本が突出した件数を記録しています。やはり2011年の東日本震災の時は発生件数が顕著です。ただ古い年だと、特に途上国では記録の正確さに問題がある可能性はあるようです。インドネシアやPNGの古い時期のデータは、過小評価されているかもしれません。

バヌアツの法則?

これだけ地震の多い日本ですから、次に大きな地震が来るのはいつだ、というのは大きな関心事。そんな中で、以前ネットで「バヌアツの法則」なるものを見かけました。これはバヌアツで大きな地震があると、その14日以内に日本でも大地震が発生するというもの。まぁ、さすがにそんな簡単な予知方法があるわけないだろうとは思いましたが、暇つぶしに確認をしてみました。

上と同じUSGSデータで、世界各国で地震(M6以上)が発生した後、14日以内にM6以上の地震が日本で発生した事例を数えました。仮に同じ期間に日本で2回以上発生していても、それは1回と数えています。また各国で同日に2回以上、M6以上の地震が起きていれば、それは1つにまとめています。

もちろんインドネシアやPNG等、地震の発生回数自体が多い国では、日本で続く回数も多くなるでしょうが、同時に発生しない偽信号の回数も多くなると思われます。この確率(=的中率)が高ければ、前兆指標として優秀だと言えます。グラフ中の「%」が、各国の的中率を計算したものです。あまり地震が発生しない地域を見ても仕方ないので、1900年以降の大地震発生回数が100回以上の国に絞って、日本で地震が発生した回数(TRUE)の上位10ヵ国・地域を選び、その的中率を計算したものです。

本当は、この的中率を日本の通常の地震発生率で割った「確率利得」というもので判断するべきらしいのですが、ちょっとこの分母の計算方法が面倒くさそうなので、ここでは分子だけにします。まぁ、分母はすべての国で共通ですから、国横断で見るなら分子だけでも問題ないだろうと思ったものです。

これを見ると、インドネシアでは1167回(同日複数回の発生数をまとめているので、さっきの数字より少ない)の大地震発生イベントのうち、その2週間以内に日本で地震が起きたのは281回で、全体の24.1%に当たります。同様にPNGは26.2%、アラスカ25.1%、ロシア22.9%と、いずれも2割ちょっとという数字に落ち着きました。バヌアツは的中回数ベースで7位、的中率24.3%という結果です。

面白いことに、なぜかどの国を見ても2割台半ばで安定していて、特にどの国が日本の地震の前兆として「優秀」ということはなさそう。これを見て「的中率2割なら凄いじゃないか」と考えるか、「2割じゃ予測にならんぞ」と考えるか、そこはお任せします。

時期による差はあるか?

さて上記は1900~2025年という期間全体で見たものですが、地震にある程度の周期があるとすれば、時期により異なるかもしれません。そこで同じ検証を10年間の枠で計算してみます。真面目に言えば、地震の周期なんて数百年単位でしょうから、これでも短すぎるでしょうけどね。

最初は1900~09年の10年間、次は1901~10年、1902~11年と1年ずつずらして、各国について計算したものです。グラフ上、各期間の最終年に合わせてプロットしています。

これだとピークは1925年頃の期間のトンガで、的中率は7割越えです。ただその後、何度か波はありつつ、近年の確率は水準を落として2~3割の間で行き来しています。バヌアツやソロモン諸島を含め、あまりに上下変動が大きい国は、やはりデータの不正確性が影響している可能性は念頭に置いたほうがいいかもしれません。

バヌアツは1950年頃、6割ほどの高い的中率だったのですが、その後は急落。ただ2010年頃はしばらく3割台の比較的高めの的中率を維持していました。「バヌアツの法則」が言われたのは、東日本大震災が起きた、この時期だったのかもしれません。ただ足元では2割以下にまで的中率を大きく落としています。

ということで、色々と作業をしてみましたが、安定的に日本の地震の前兆となるデータを見つけるのは難しそう。バヌアツがインドネシアやPNGより特に優れているとも言えず、「インドネシアの法則」でも「ソロモンの法則」でも、どれでも同じという感じですが、ちょうど東日本大震災の頃にバヌアツの的中率が(一時的に)高かったことが、この都市伝説(?)の原因だったのでしょう。足元では「フィリピンの法則」が上り調子ですかね。

タイトルとURLをコピーしました