さすがに年の瀬も押し詰まってきて、もう真面目にモノを考えたくなくなってきました。
ということで、今年の「新語・流行語大賞」を何かデータを使って語れないか、軽く作業をしてみました。まぁ、大掃除の合間にでもご覧ください。
今年もイチャモンから逃れられず
年末恒例の「新語・流行語大賞」。今年からスポンサーが変わったようですが、選考委員は(多分)変わらないので、いつもの流れで見続けてもいいのでしょう。従来、野球関連の用語が優遇され、プロ野球ファン以外からは「それかよ」と批判されるのが恒例。また政治的には非自民サイドの用語への傾倒も同様で(「アベ政治を許さない」なんてのもあった)、ここも常々指摘されてきたところです。
今年は高市総理の発言「働いて…働いてまいります」が大賞で、各方面から忖度を疑う批判が殺到しました。従来の非自民的な姿勢からすると、安倍政治の継承を謳っている高市総理が受賞というのも、実に味わい深いですね。かつてなら、むしろ受賞発言の前の「馬車馬のように働いていただきます」という、相手側に過重労働を強いる発言のほうを批判的に取り上げたんじゃないかなぁ、とか思ったりもするんですが、やはり初の女性総理かつ世間の高支持率というところで、選考委員側も好意的に見たんでしょう。
「存立危機事態」「おこめ券」はノミネート発表以降だったので入りませんでしたが、そうでなかったら有力だったでしょうね。個人的には、再び表舞台に出てきた「プライマリーバランス」をリストに入れて、あんな議論、こんな議論をしてほしかったところですが、まぁ、堅すぎるか。他に政治ネタでいけば「日本人ファースト」「財務省解体」「ホームタウン」辺りもネタになりそうですが、ちょっとネガティブすぎるかもしれません。とはいえ、アホな盛り上がりがあったことを記録に残す意味もある感じはするんですが。
と、こういう感じでイチャモンつけられるのも毎年恒例。某ラジオ番組で「遠足は家に帰るまでが遠足。流行語大賞も突っ込まれるところまでが流行語大賞」と言っていて、うまいこというなぁと感心した次第です。
世界各国の「今年の言葉」
他の国にも似たようなものがあるのか見ると、欧米は真面目なものが多くて、逆に面白くない。本当は韓国や中国の言葉が知りたかったのですが、うまく探せませんでした。
まず、これは新聞などでも出ていましたが、イギリスのOxford dictionaryの選ぶ「今年の言葉」は「rage bait(煽りネタ)」。意図的に炎上を引き起こすよう作られたネットのネタ。オーストラリアのMacquarie dictionaryも似た方向の「AI slop(AIによるゴミ)」。嘘や誤り、無意味な情報が多く含まれる生成AIによる低品質コンテンツを指す言葉だそうです。英誌Economistの選ぶ今年の言葉も「slop」でした。
イギリスのCambridge dictionaryは「parasocial(擬社会的)」。身近にいる生身の人間以外に親近感を抱く「疑似的な関係」ですが、AIチャットボットを恋人のように扱ったり、会話を進めるうちに自殺を勧められたりという事件の多発も背景なんでしょう。ドイツのGesellschaft für deutsche Sprache(ドイツ語協会)も「KI-Ära(AI時代)」だそうです。
ちょっと毛色が違うのが、アメリカのDictionary.comが選ぶ「67」。私は全く知りませんでしたが、「まぁまぁ」「なんかすごいね」的な意味だそうです。NBA選手の身長6フィート7インチ(約2メートル)が語源らしいです。何や、それ?
最後のアメリカはともかく、やはり全体的にはAI、SNS、ネット社会的なものへの批判的・懐疑的な言葉が選ばれている感じはします。
で、どれだけ「働いて×5」が流行したのか
まぁ、こういう真面目な話は置いといて、流行語大賞でいつも言われるのは、「この言葉、そんなに流行ったか?」です。この辺りを少しでもデータで見られないかと思い、Google Trendsで検索頻度を調べてみました。大賞の「働いて×5」に加え、ノミネートにも入らなかった「馬車馬」発言も見てみます。
最近はGoogleで普通に単語を検索するより、GeminiなりChat GPTなりに聞くほうが増えているとは思うし、「流行」という意味ではSNSでのツイート/リツイート(今もこの用語でよかったっけ?)のほうが適当かもしれませんが、簡単にできるGoogle Trendsでお茶を濁しました。
今年の場合、ちょっと面倒なのが「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と長い点。これをこのまま検索する人が多いとは思えず、もっと簡単に「働いて」、「働いて働いて」あるいは「働いてまいります」などと入れるほうが多いと思います。とはいえ「働いて」だけだと、全く別の検索の可能性もあります。「馬車馬」も同じですね。
そこで「働いて」「働いて、働いて」「働いて働いて」「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」の4ワード、また「馬車馬」「馬車馬のように」「馬車馬のように働いて」「馬車馬のように働いていただきます」の4ワードで、今年1月からのGoogle Trendsを見てみました。数字は週ごとに一番多かった検索回数を100とした相対的な数だそうです。一度に比較できるのは5語までなので、共通のキーワードを設定して、スケールを合わせる作業をしています。
総裁選があった10月4日以前の「働いて×5」はゼロですが、簡略用語は一定の検索回数があります。これらは高市総理の発言とは全く無関係の検索ですが、10月初旬以降、これらの用語の検索回数も明らかに増えているので、恐らくこの差分が高市発言の検索だと考えていいのでしょう。
「馬車馬」も同じですね。「馬車馬のように働いていただきます」の検索はありませんが、「馬車馬」「馬車馬のように」の検索が10月第1週に急上昇します。これが高市総理発言の検索だと考えていいのでしょう。
「働いて」と「馬車馬」を比べると、持続性の観点からは「働いて」に軍配が上がりますが、瞬発力の観点からは「馬車馬」の完全勝利。10月第一週以前の検索数からの急上昇ぶりは「働いて」の比ではありません。インパクトという点では明らかに大きかった「馬車馬」発言がノミネートすらされなかった選考委の姿勢変化を、ちょっとチクリチクリとしたい気持ちが抑えられません。

ノミネートを含む全体で比較してみる
ということで、ベストテン入りを逃した言葉も含めた28の言葉でGoogle Trendsを見てみます(「馬車馬」は除外)。ここでも共通キーワードを設定して、スケールの調整をしています。
高市総理発言については、上で見たように「働いて」「働いて働いて」などの簡略語の動向にはほぼ差がないので、どれかひとつだけ見ればいいだろうと判断し(この辺り、Google Trendsの設計がよくわかっていないのですが)、「働いて働いて」と「働いて…まいります」の2つを使い、前者については10月4日以前の平均との差をとり、これに「働いて…まいります」の検索回数を足すことで、この発言の検索頻度とすることにしました。
また「緊急銃猟/クマ被害」「昭和100年/戦後80年」は、それぞれ2つの言葉に分けて頻度を調べて、その合計としています。
以下が単純にすべての言葉の検索頻度推移です。12月1日の発表後には各用語の検索が急上昇するため、11月最終週までの期間にしています。因みに11月初旬に各用語で小さなジャンプがあるのは、11月5日に新語・流行語大賞のノミネート発表があったせいでしょう。
当然ですが、「7月5日」の検索数が7月第1週に突出しています。そのままでは他の用語の傾向が読み取れないので、縦軸を分けています(あまりきれいじゃないのですが)。
これを見ると、夏前から「ラブブ」の検索頻度が徐々に上がり、8月末から9月初旬にヤマが来ています。さすがに私はラブブを買う年代でもありませんが、こんなオヤジでも確かによくこの名前は耳にしました。その後、中国国内でも偽物が出回り始め、中国政府が取り締まりに躍起になるというオマケも付いてきたのが面白かった。年末にかけて落ちてはいますが、それでもかなりの高頻度が継続していて、人気は続いている感じ。この手のキャラクターグッズは日本の独壇場という感じでしたが、うかうかしてられません。
一方で「ミャクミャク」も強い。万博が開催した4月初旬に最初のヤマがあり(「トランプ関税」に匹敵!)、その後、少し落ちましたが、閉幕の10月半ばにかけて次のヤマ(最初のヤマ以上の検索頻度)が来ました。一過性のものではない、年間を通してのヒットだったと言えそうです。
その下になると、ちょっと見にくいですが、「麻辣湯」が案外強いです。年末にかけて持続的にスパートをかけている感じです。辛い物が苦手な私は、これが流行ったきっかけを知りません。やはり年齢とともに、世間からのズレが生じてしまうなぁ。「チャッピー」も年間を通して高い水準を維持していますね。私もかなりお世話になりました。

総検索数、週当たり平均で順位をつけると
年間通して高い検索数をつける用語もあれば、流行の時期が限られる用語もあるので、11月末までの期間で、総検索数と週当たりの平均検索数(ゼロの週は除く期間平均)で比較してみます。縦軸は総検索数で並べています。
どちらで見ても、やはりトップは「7月5日」。まぁ、確かにインパクトはありました。あの頃は本当に外国人観光客が少なくて、実に街中を歩きやすかったです。観光業界から訴訟でも起こされないかと心配になりました。
また「ミャクミャク」vs「ラブブ」の日中キャラクター対決では、総検索数ではミャクミャク、週平均ではラブブと、両者拮抗する結果になりました。この辺りがトップ3で、他を圧倒している感じです。
これに次いで頑張ったのは「麻辣湯」と「チャッピー」で、「トランプ関税」よりも人気。政治ネタでは、「卒業証書19.2秒」が総数では「働いてまいります」に負けましたが、週平均では大きく上回っています。確かにあのネタは面白かった。世間には学歴詐称って、案外あるような気はします。私の身の回りにも、「実は」という人間の噂は聞きますしね。
ということで、どうも「働いて×5」はGoogle検索に限ってみれば、それほどの「流行語」でもなかったようです。まぁ、こういうダメ出しも含めての年末行事ということで、また来年も頑張って、突っ込みどころ満載の微妙な用語を選んでほしいものです。


