今年も上半期を過ぎました。トランプ政権の始動以降、相互関税の発表、イラン空爆、大型減税(+低所得者層切り捨て)法案の通過と、金融市場にもストレスがかかる6ヵ月でした。
特に4月の相互関税発表時には株価も大きく下がり、NISA反対派の人たちは「それ見たことか」と大喜びでしたが、TACOトレードのおかげで、その後は意外と堅調に推移。
とりあえず6ヵ月が過ぎたところで、NISA投信商品の値動き等をレビューしてみます。
NISA各商品のパフォーマンス
まずはNISA対象の投資信託商品について、今年上半期のリターンと過去1年間の標準偏差を見てみます。NISA対象商品にはコモディティやREIT、債券などもありますが、今回は株式信託に絞って、投資先の地域で分けてパフォーマンスを見てみます。
やはり目立つのは北米のパフォーマンスの低さです。リターンがプラスだった信託商品はほとんどありません。グローバルもかなり低調(大半が米国株なので当然ですが)。これに対し日本株は大半がプラス、しかもリスクも北米より大幅に低い辺りに分布しています。まぁ、為替の影響もあるので、外貨建て商品と単純な比較はできないでしょうが、それでも欧州も似たような感じ。やはりアメリカ一人負けと言っていいでしょう。
トランプは、「輸出国が払う関税で(←何でやねん!)、大型減税が可能になり、アメリカの黄金時代が始まる!」みたいな言い方をしていましたが、株式市場に関して言えば、全く違う姿になっています。投資家はちゃんと合理的に見ているようです。

トランプ政権が始まる前、2024年末の段階のデータと比較したのが以下の図。左パネルが過去6ヵ月のリターン、右パネルがシャープレシオ(リターン÷標準偏差)。両方とも、昨年末時点との差をとっています。
リターンについては地域別のパターンは先ほどのグラフと同様で、北米、グローバルは沈没、日本、欧州などは全体に年末時点から改善しています。
一方、リスク調整後リターンを表すシャープレシオで見ると、日本・欧州も昨年末の時点よりパフォーマンスは悪化しています。昨年末より改善しているのは中南米のみです。やはり名目リターンは高まっていても、相互関税前後での荒れた相場により、リスク見合いでのリターンという意味では、ほぼすべての地域でパフォーマンスは悪化したということです。

因みに過去の関連記事でも見てきた信託報酬とパフォーマンスの対比ですが、やはり信託報酬の高い商品で高いリターンを達成できたとはいいがたいですね。こういう大荒れの時こそ、アクティブ投信で荒波を乗り越えました!と言いたいところですが。運用会社には、もっと頑張ってほしいところです。

4月で投資を回収するべきだった?
4月の相場急落時には、「NISA元本割れ」みたいなネット記事が頻出していました。特に新NISAが始まってしばらくは様子見していた人が、ようやく手を出したところでの急落だったので、もろに被害を被った方々も多かったでしょう。
その時、個人的にブチ切れそうになったのが、従来から「株はバブル、絶対暴落する」と言い続けていた某評論家。「だから、おやめなさいと言ったのに」という上から目線のタイトルで記事を書いていました。
この方の記事内の主張は、「つみたてNISA」のように、高くても安くても自動的に同じ商品を買い続けてしまうような投資は即刻停止し、積み立てるはずのお金は貯金しろ、というもの。
そこで4月頭の段階でNISAを解約した場合と、そのまま継続した場合とで資産額がどう異なるか、ちょっとシミュレーションをしてみました。商品としては、eMAXIS slimシリーズのSP500、オルカン、日経平均の3種類を使います。
まだ4月の急落から日にちも経っていないことから、毎日定額で積み立てをするケースを想定します。あまりこういう積み立てをする人はいないかと思いますが、制度的には、毎日積み立ても可能です。
新NISAが始まった2024年1月から毎日1000円ずつ(およそ月20000円という一般的な額)積み立ててきた人が、一方はトランプ関税後も動じずに積み立て継続、もう一方はそこで解約して(便宜上、4月1日の解約としました)、上記評論家が言うように、その後は毎日1000円を貯金箱に入れ続けたとします。
この両者の資産残高を比較したのが以下のグラフ。上段は資産残高の推移比較、下段は両者の差額です。積立開始は2024年初ですが、トランプ関税以前は同じ数字で推移するので、グラフは2025年1月以降のみにしています。
資産残高は、4月1日以前はもちろん同じ水準ですが、その後は青線が解約したケース、赤線が積立投資を継続したケースです。解約ケースでも伸びているのは、毎日貯金箱に入る1000円分です。トランプ関税の発表後、しばらくは投資継続パターンでは負けが込みますが、日経平均では4月下旬、SP500とオルカンでは5月半ばには逆転しています。
両者の資産残高の差を見ると、現時点では、投資をやめた人の資産残高に比べ11%ほど、投資継続パターンの資産残高が上回っています。
積み立て投資開始時期を例えば2025年1月にしても、資産残高の差の形状はほぼ変わりません。もちろん、絶対的な金額水準は異なりますが、差もほぼ10%前後と大きく変わりません。

もちろん株価が今後、どうなるかは誰にも分かりません。今、トランプ相互関税は8/1まで交渉期限が伸びていますが、最終的に交渉決裂して世界貿易が大混乱したり、あるいは25%関税が課された結果、日本が長期不況に逆戻りしたり、という可能性はゼロではありません。
ということで、「だから、お続けなさいと言ったのに」なんていうつもりは全くありません。常にリスクはあるものとして考え、個々人のリスク許容範囲内で投資しましょう、としか言えません。
逆に「だから、おやめなさいと言ったのに」みたいに、「私は全部お見通し」的に終末論を語る論調がどうにも気に食わない。まぁ、7月5日の大地震で日本が壊滅するという予言と同じレベルです。
この人が、現在の市況回復を見て、前言を撤回・反省したという記事は全く見かけません。恐らく仮に誰かに指摘されても、「今回はたまたま戻ったが、いつかは必ず暴落する」というのでしょう。
過去のITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックの暴落も、ちゃんと持ち直したという事例は無視して、「いつかは暴落する。1年後か100年後かは分からないが」とでも言い続けるのでしょうね。