女子に1週間遅れて、男子テニスも年間最終戦が終わりました。やはりシナー対アルカラスの決勝カードになり、シナーが2年連続で優勝。しかしランキングではアルカラスが1位を3年ぶりに奪還しました。
女子と同じく、男子についても、Eloスコアで状況を見てみましょう。やはりオフィシャル・ランキングとの違いが、かなり見られます。
ATPランキングとの比較
女子テニスでやったのと同様、男子テニスについてもオフィシャル・ランキングと、Eloスコアによるランキングを比較してみます。以下は2025年の試合のみを用いたEloスコアによるランキング(Elo_rank_25)、昨年以前も含む全試合を用いたランキング(Elo_rank)との比較です。いずれかで20位以内に入った選手のみ、グラフにしています。これらの指標がどう違うかは、もしご関心あれば前回の記事をご覧ください。
今年のATPランクでは年末にアルカラスが追い上げて、シナーから1位を奪還しました。しかしEloランクだと、いずれの計算でも、両者の順位は逆転します。また3位のズべレフも、年間Eloランクだと7位、総合Eloランクだと5位に落ち、4位のジョコビッチが、いずれのEloランクでも3位に上がるという結果です。
全米の準優勝以降、年末にかなり追い上げて、ATPファイナルズにも初めて参加したオジェ=アリアシムは、オフィシャル・ランクでは8位ですが、今年のEloランクでは4位に上がります。ファイナルズでは、ちゃんと決勝ラウンドまで進みましたから、イメージ的にはこちらのほうが近い感じはします。本当はルバキナのように、最後に大番狂わせを期待したのですが、ちょっとそこまでは行きませんでした。残念。
女子と同様、年間Eloランクのほうが総合Eloランクよりもオフィシャル・ランクとの差が大きいように見えます。
この中でちょっと面白いのがブブリク(11位)です。総合Eloだとオフィシャル・ランクより下ですが、年間Eloだとオフィシャル・ランクより高くなるという逆転現象が起きています。今年、急激に上位食いを多くやったということなんでしょう。確かにインスタで、妙に彼の試合のダイジェストが頻繁に流れてきたのですが、この辺りの影響でしょうかね。
また、なかなかに立派なのがディミトロフ。かなり年齢も上がってきて、オフィシャル・ランク自体は44位と低迷していますが、総合Eloランクで6位、年間Eloランクでも12位と、かなりの上位を維持しています。まぁ、38歳のジョコビッチに比べれば、というコメントもあるでしょうが、こういうベテランがいまだに頑張ってくれるのは、年寄りにはうれしいところです。


年間の推移
2025年を通してのスコア推移を見たのが、以下のグラフ。計算は2025年以前の試合も含めた総合Eloです。
やはり、これを見るとシナーが年間を通して、非常に安定的かつ圧倒的なトップを維持していました。6月に一度下げているのは、ウィンブルドン前哨戦でブブリクに早いラウンドで負けた時。しかし、その後のウィンブルドンでは優勝。全米は準優勝ですが、その後はさらに盛り返し、ファイナルズも優勝して年末にピークという見事な戦績でした。
アルカラスは、年初の段階では遅れを取っていたのですが、やはりクレーシーズンの5月ごろから急激に追い上げて全仏で優勝。ウィンブルドンは準優勝でしたが、全米で優勝と年後半に勝ちを重ね、9月には東京にも来てくれ(来年は無理だろうなぁ)、優勝しました。実は年間でのスコアのピークは、このジャパンオープンの優勝時でした。
一方、ジョコビッチは年初がピーク。当初はなかなか優勝に手が届かず、春先にかけて徐々にスコアを落としましたが、その後はずっと踏みとどまった様子。グランドスラム優勝はありませんでしたが、全てでベスト4ですからね。38歳でこの成績は、凄まじいといっていいでしょう。28年のロサンゼルス・オリンピックでの引退を示唆していますが、まださらに3年間、プレーするぞという意思だとすれば、完全に「中年の星」です(なんて言っては失礼か)。
女子ではルバキナの後半の追い上げが顕著でしたが、男子ではオジェ=アリアシムか。年初の段階では、他の上位選手との間にはギャップがありましたが、全米ベスト4以降、かなりの急激な追い上げでした。治療で戦線を離れているドレイパーを含め、4位以下のスコアはかなりの混戦模様。この中から誰が来年抜け出すか。個人的にはオジェ=アリアシムのシャープで攻撃的なスタイルは楽しいので、頑張ってほしいところです。

トップ4の過去数年間
最後に現在のトップ4(ズべレフまで)のスコアの推移を、2021年からで見てみます。
やはり安定しているのはジョコビッチ。2013年以降のデータでスコアを計算しているのですが、期間中での最高スコアはジョコビッチ(2016年4月)。それから9年経っても、同じようなスコアを維持しているのは、超人としか言いようがありません。好き嫌いは分かれる感じもしますが(なぜかフェデラーやナダルと違うんだよな)。
ズべレフは、それなり高い水準で安定してはいるのですが、どうも抜けきれない。2021年初の段階では同じような水準だったシナーとは、かなり差が出てしまいました。まぁ、シナーの急上昇ぶり(特に2023年後半以降)が凄すぎるのでしょうが。
シナーのグランドスラム初優勝は24年全豪ですが、前年のファイナルズで準優勝。デビスカップでもイタリアを優勝に導いています。24、25年とグランドスラムはアルカラスと2つずつ分け合っているし、ほぼ一本調子で上昇を続けていて、今後、ジョコビッチの最高スコアを抜くかどうか期待されるところ。
そして急激な伸びという点では、やはりアルカラス。ツアーデビューは2020年なので、すぐ翌年に急上昇を始めたことになります。そして22年の全米で初のグランドスラム・タイトルですから、まぁ、天才ってのは最初から違うということですね。
2025年は、年初の段階ではスコアがあまりよくありあせんでした。24年は全仏、ウィンブルドンと優勝をしたのですが、その後、少し調子を落としています。以前にも書いた通り、8月のパリ・オリンピックで銀メダルを取ったのですが、その疲れもあり、直後のシンシナティ、全米ともに2回戦負けでした。アジアツアーの2戦(中国)はよかったようですが、年末のパリは3回戦負け、ファイナルズも予選ラウンドまでという感じ。
まぁ、その分、今年は急激に伸ばして、シナーとの2強を築いたので、当面、このトップ2の世界が続くのでしょう。でも、誰かここに割って入ってほしいなぁ。常に2人の決勝カードとか、どこかで飽きてしまいそう。確かガウフが「誰が決勝に残るか分からない女子の方がエキサイティングでしょ」みたいなことを言っていたが、個人的には納得しているところです。

