2月末のイラン攻撃で株価は大きく調整、今年に入って以降、高市トレードで上がった分が、ほぼ帳消しになってしまいました。トランプさんよぉ、余計なことすんじゃねえよ、と言いたいところですが、まぁ、聞いてくれないのは分かっています。
でも今年は中間選挙もあり、株価下落、ガソリン価格の高騰等から世論がどう動くかは気にしているはず。そもそもイラン攻撃をそそのかしたのはイスラエル(というかネタニヤフ)。今回はイスラエルに対する世論の動きを見てみようと思います。
誰かネタニヤフを止めろよ
2月末に始まったアメリカとイスラエルによるイラン攻撃。完全にネタニヤフの政治的思惑が引き起こしたものです。
そもそも彼は2019年、3件の汚職容疑で検察に起訴されていました。現職首相としては初めての事例です。加えて2023年7月、最高裁の権限を制約する司法改革法案を与党の強行採決で可決したことで、大規模な反政府デモも起きました。
そんな中で起きたハマスによるイスラエル襲撃(2023年10月7日)。もちろんパレスチナに一定の共感を持つ層を含めて誰も支持しないものでしたが、その後のイスラエルによるガザ攻撃は、あまりに非対称な激しさを持つものとなりました。加えてハマスの襲撃を許したネタニヤフ政権への批判にもなり、支持率をさらに急落させました。
こういう訳で、ネタニヤフの心の中には、自己保身のためにもガザとの「戦争」はやめられない、という気持ちがあったと見られています。実際、安全保障上の理由を盾に裁判への出席、証言も忌避し、「国家の分断」を理由に大統領に恩赦を求めてもいます。
ところが最後の人質の遺体も返還されてしまい(2026年1月27日)、どうやっても今までのような戦争状態が続けられなくなってしまいました。すると1カ月後の2月28日、イランへの軍事攻撃を始めました。ネタニヤフが自身の首をつなぐために新しい戦争を欲しがっていた、と考えるのが普通でしょう。
現状、与党リクードは議会の4分の1しか議席をもたない不人気政党です。去年の数字ですが、国内でのネタニヤフへの世論調査で支持45%、不支持53%と劣勢。次の選挙に負けて首相でなくなれば、完全に司法プロセスに身をゆだねることになってしまいます。そこでイスラエル国民の支持が得られるイラン攻撃を行い、これを背景に支持率を上げ、早期解散・総選挙にもっていき首相として続投する、というのが彼の目論見だったわけです。
ところが、イラン攻撃開始後も自分への支持率が上向かないため、総選挙前倒しを撤回し始めたと報道されており、やはりイラン攻撃は自身の政治的保身という私的な目的だったのが明らかだと見られています。
まぁ、そもそも攻撃直後、ルビオ国務長官が「イスラエルがイラン攻撃をしようとした。そのままだと米軍施設にも被害が及ぶので、先制攻撃に踏み切った」という発言をしており、完全にイスラエルに巻き込まれた戦争だと宣言してしまっているし、もう隠しようがありません。
世界各国のイスラエルへの見方
もちろん、イランは周辺国からも危険視されているし、今の革命政権には国内での支持がないのも事実。そういう意味ではベネズエラと同じとは言えます。イラン攻撃自体は、イスラエル国内でも支持されています。とはいえ、実際に差し迫った危機の根拠も示さず、何の国連決議も経ず、いきなり空爆、しかも軍事施設の破壊ではなく、指導者を爆殺する目的というのは、かなり行き過ぎ。それがネタニヤフの自己保身目的と分かっている状況で、国際的な支持は得られていません。
というような経緯もあり、世界各国で対イスラエル世論が厳しくなってきています。まだイラン攻撃前ですが、2025年春にピュー・リサーチセンターが世界25カ国で行ったイスラエルに対する世論調査の結果があったので、この辺りを見てみます。グラフは、イスラエルに対し「非常に好感very favorable」「ある程度好感somewhat favorable」「非常に反感very unfavorable」「ある程度反感somewhat unfavorable」を聞いたもの、好感度の合計が高い順に並べています。グラフ中の△は好感から反感を引いた純好感度の値、×は「ある程度」に0.5、「非常に」に1.5のウェイトを付けた純好感度の値です。
なぜかナイジェリア、ケニアというアフリカの国で高い好感度ですが、それ以外の国では何とアメリカも含めて反感が好感を上回るという結果です。トルコで完全に反感にもっていかれているのは当然(ウェイト付きだと、さらに顕著)、インドネシアもイスラム教の国なので仕方ないですね。
日本は好感度では真ん中より少し下の位置ですが、純好感度で行くとかなり反感が強く出ています。まぁ、日本は昔の連合赤軍の時代から、国民世論としては「虐げられたパレスチナ人民」への連帯感を感じている向きが強かった国ではあります。ただウェイト付きの純好感度だと、少し緩和されます(×のほうが△より穏やかな見方)。こういう国は案外少数派で、他にはドイツ、ブラジル、ポーランドぐらいしかありません。
ドイツはホロコーストへの反省もあり、イスラエル支持を「国是」としてきましたが、少なくとも現状では国民の意見としては逆方向。ただし「非常に反感」が比較的少ないのは、やはり歴史を反映したものかもしれません。ただイラン攻撃に関しては、メルツ首相が一定の「理解」を示した一方、シュタインマイヤー大統領は「国際法違反」というなど、ちょっと対応が分かれている感じはします。
まぁ、いずれにしても足元の国際世論を見ると、イスラエルは主要国で支持を受けているとは言い難く、世界から爪弾きされてしまいそうな勢いです。短絡的かもしれんが、もう「シンドラーのリスト」とか「ライフ・イズ・ビューティフル」とか、ああいった映画を昔と同じようには見られないかなと思うのは私だけでしょうか。

最大の支持者、アメリカの見方は?
イスラエル(orネタニヤフ)としては、それでもアメリカ政府の支持さえ受けていれば、他の小国の言い分など気にしない、というのが現実でしょう。上のグラフでも、アメリカでの好感度と非好感度の差は、マイナスとはいえ、かなり僅差とは言えます。
そこでギャラップがアメリカで行った、もう少し直接的に「イスラエルとパレスチナのどちらに共感するか」という調査があったので、これを見てみます。伝統的にはイスラエルへの共感のほうが圧倒的で、パレスチナへの共感は10%台で推移してきたという、かなりアメリカらしい姿が見られます。
ところが、これが2020年代に入って以降、急速に変化を始めています。2018年をピークにイスラエルへの共感が継続的に低下、逆にパレスチナへの共感は2013年を底に改善しています。トランプ1期目に転換が起きたことに意味を求めるのは、考え過ぎかもしれませんが。
2023年から24年への低下はハマスによる襲撃の影響でしょうが(2023年調査は2月のものなので、ハマス襲撃の前)、パレスチナへの共感はその後も一貫して上昇、直近の今年2月の調査では、ついにパレスチナへの共感がイスラエルへの共感を上回り、逆転してしまいました。従来のアメリカ人の見方からすると、あり得ない姿だと言えます。
やはり、イスラエルのガザ殲滅作戦がマイナスに働いていると考えるべきでしょう。ピュー・リサーチによるハマス攻撃への見方についても、ハマス襲撃直後の2023年12月では、「ちょうどよいabout right」と「不十分not enough」の合計が「やりすぎtoo far」を上回っていましたが、昨年9月段階では逆転しています。
現状ではトランプはイスラエル支持ですが、ガソリン価格の高騰に加え、MAGA支持層からの離反も見えてきている状況で、早めにイラン攻撃から手を引きたい気持ちが見えています。多分、頭の中では「くそっ、ネタニヤフに騙された」と思っているんじゃないかと思うのですが、果たしてどうやって幕引きを図るのか。

