年明け早々、またトランプがやってくれました。いきなりのベネズエラ攻撃。さすがに地上攻撃にまで突入するとは想定していませんでした。
アメリカの他国への軍事介入、あるいは非公式の政権転覆工作など、これまでも頻繁にあったのですが、その介入が果たして「民主国家」「親米国家」を作ることになったのかどうか、ちょっと過去の事例を見てみましょう。
いきなりのマドゥロ拉致作戦
昨年後半から、ベネズエラ・マドゥロ大統領がアメリカへの麻薬密輸の親玉だとして、証拠も曖昧なまま船舶を攻撃し、生き残った乗員も追加攻撃で殺害、さらには石油タンカーを拿捕したりしていましたが、本当に地上攻撃まで進むのか、懐疑的な見方のほうが強かったと思います。ただ攻撃の数時間前に賭けサイトで「1月末までのマドゥロ退陣」への掛け金を倍増して、40万ドル儲けたヤツがいるらしい。一体誰だよ。
しかし1月3日夜、地上攻撃に踏み切り、大統領夫妻を拘束、アメリカに移送してしまいました。もちろんマドゥロ政権の正統性には疑問符がつき、反対勢力を弾圧、経済失政でハイパーインフレを招き、国民も苦しんでいたのは明らか。この政権の崩壊自体を悲しむのは、カネをつぎ込んでいた中国ぐらいでしょう。しかしここまで露骨に石油資源の奪取意図を出して、国際法を無視して他国に攻め込むというのは、完全に帝国主義・植民地主義の復活としか言いようがない。
前日の2日には高市総理と電話会談がありました。まぁ、何の事前連絡もなかったことでしょう。本来なら高市総理はブチ切れてもいいのでしょうが、さすがにそうもいかず、当たり障りのない一般論を述べるにとどまっています。「存立危機事態」発言でミソをつけた後なので、ここは外務省の発言要領から一言一句、外れずに行くしかありませんね。
イラク侵攻の際は、嘘でも「大量破壊兵器がある」と言い張って、有志連合を組もうという努力をしましたが、今回は全くアメリカの単独行動。むしろヨーロッパ諸国などを巻き込んで、石油利権を渡してなるものか、石油精製施設の復興には、日本や韓国から相互関税の見返りに分捕った5500億ドルと3500億ドルがあるので、仮に無駄になってもそれを使わせればいいや、という考え方でしょうか。
こうなると、本当にグリーンランド併合にまで突き進みそうで怖い。少し前まではブラフか、観測気球か、単なるパフォーマンスか、とも思って見ていましたが、ちょっと見直さないといけない感じ。ここはTACOしてくれよ、と思わざるを得ません。
アメリカの軍事侵攻の歴史
ただ、アメリカはこういった他国への武力介入や政権転覆の試みを、過去にも頻繁に行ってきたのは事実。私は歴史にはあまり強くないので、Chat GPTとGeminiに聞いてリストを作ってもらいました。一応、両者でクロスチェックしていますが、間違いがあればご容赦(グレナダ侵攻が入っていないので、ちょっと気になりますが)。直接的な政府による介入らしいものに絞り、いわゆる「カラー革命」のような間接的な介入は考えていません。
- イラン(1953年):石油国有化に反発した米英がCIA・MI6を通じてモサデグ政権打倒クーデターを実行し、パーレビ国王の権限を強化。
- グアテマラ(1954年):地主制改革でユナイテッド・フルーツ社の利益が脅かされたこと等を背景に、CIAが傭兵部隊・心理戦を組織し、アルベンス政権打倒クーデターに成功。
- ドミニカ共和国(1961年):CIA供与の武器が使用されるなど、トルヒーヨ暗殺・政権交代への関与が後にCIA内部調査でも確認。
- コンゴ民(ザイール)(1961年):CIA関与による親ソ・ルムンバ首相の暗殺、その後のモブツ長期独裁。
- 南ベトナム(1963年):南ベトナム軍内部の反ゴ・ディン・ジエム大統領派によるクーデターへのCIAの全面支援。
- ブラジル(1964年):右派軍部クーデターを米政府が政治的・軍事的に支援し、グラール政権打倒、その後の軍事独裁を後押し。
- ドミニカ共和国軍事介入(1965年):民主化運動の高まりへの懸念から、2万超の米軍派遣により、左派寄り政権復帰を阻止、親米政権を擁立。
- ガーナ(1966年):反西側的姿勢を強めたンクルマ大統領に対し、軍部クーデターをCIAが支援。
- インドネシア(1966年):共産党粛清と政変の過程で、スカルノからスハルトへ政権交代。CIAによる情報提供・反共勢力支援。
- ボリビア(1971年):左派的政策を推進するフアン・ホセ・トレス政権に対し、右派勢力や軍部関係者への財政的支援を提供、クーデターによる独裁政権の誕生。
- チリ(1973年):CIAが資金・宣伝・経済圧力を通じてアジェンデ政権を不安定化し、ピノチェト軍事クーデターとその後の軍政を支援。
- パナマ(1989年):アメリカへの麻薬密輸を進めるノリエガ将軍を米軍が拘束、訴追。
- ハイチ(1991,2004年):アリスティド政権の二度の崩壊。クーデター勢力への関与、あるいは政権維持に必要な支援停止による事実上の転覆として米国関与。
- アフガニスタン(2001年):9.11後の軍事侵攻によるタリバン政権崩壊。
- イラク(2003年):大量破壊兵器疑惑を理由に軍事侵攻、サダム・フセイン政権崩壊。
- リビア(2011年):NATO主導の空爆と反政府勢力支援に米国が中心的役割を果たし、結果としてカダフィ体制が崩壊。
果たして効果はあったのか
こういった米政府の介入は、本心はともかく「民主化勢力への支援」とか「米国の権益保護」とか、尤もらしい理屈をつけています。では実際にその効果があったのか、データを見てみます。
まずは「民主化支援」について、V-Demプロジェクトによる民主主義指標の推移を見ます。このデータでは各国の民主化の程度を、「選挙 electoral」、「自由 liberal」、「参加 participatory」、「熟議 deliberative」、「平等 egalitarian」の5つの視点で評価しています。まぁ、大体傾向は同じなので個々の指標はあまり気にしないでいいでしょう。
上記のリストにある介入があった年を0として、その前後、10年の推移をグラフにしました。ハイチは2回あるうち、2004年のみを使っています。
これを見ると、明らかに介入後に民主化の度合いが高まったのはパナマ、またアフガニスタンとイラクも一応の改善はあると言えそう。とはいえ、アフガンはその後、再びタリバン政権に戻ってしまいました。
しかしその他はあまり芳しい結果とは言えません。特にブラジル、チリ、グアテマラという、トランプが国家安全保障戦略で重視している「西半球」での過去の介入は明らかに悪化しています。
米国との関係深化という観点で、各国の貿易に占める米国シェアの推移も見てみます。データはIMFのDirection of Tradeです。介入前後の10年間の輸出入に占めるアメリカのシェアです(一部、古いデータがない国もあります)。
ドミ共の輸出、ガーナの輸入辺りは健著に上昇していますが、他はあまり変わらないか、むしろ低下傾向にあると言えそうです。ベトナムは、この後、泥沼の戦争に入っていくので、輸出入とも完全にアメリカ依存ですが、これは考えない方がいいでしょうね。リビアは前後を通じて水準自体が低いので、ここも外しましょう。
と、こんな感じでざっと見てみましたが、やはりアメリカの介入が何らかの意味でプラスの効果を発揮してきたとは言い難い感じ。恐らく最大の成功例が日本なんじゃないかとは思います。本当に日本人は素直ですなぁ。


