アフリカの発展モデルとして中国を選んでいるのはどんな層か

前回、アフリカ各国の国民が、国の将来の発展モデルとしてどんな国を選んでいるのかを見ましたが、やはり米中がトップ2の選択肢でした。今回は、国の発展モデルの選択に、どのような要因が影響しているのか、少しだけ見てみようと思います。

使えなかった特性(言い訳)

前回から使っているAfrobarometerというデータは、なかなかに詳細なもので、回答者の年齢、性別、学歴等とともに、「民主主義を望ましいと思うか」「複数政党制は望ましいと思うか」「国が進んでいる方向を正しいと思うか」「大統領のパフォーマンスを評価するか」のような政治的な質問項目もあります。

最初は、こういった政治的な問題意識と発展モデルの選択に明確な傾向が出れば面白いかと思って作業を始めたのですが、結論から言うとダメでした。こういった特性と発展モデルとの間で統計分析をしてもダメ、グラフ作業をしても、ほとんど差は見られませんでした。

また個人的には中国との経済関係(輸出入や直接投資のプレゼンス)との関係にも関心があったのですが、こちらもあまり説得力のある動きではありませんでした。これは残念。

ということで、以下ではこういう(面白い)特性は無視して、それなりに差が見られる項目だけを取り上げています。あまり面白い結果とは言いにくいのですが、ご容赦ください。

性別×年齢 or 教育水準

まず簡単に回答者の性別×年齢と発展モデルの選択の関係を、国横断で見てみます。横軸に年齢をとり、発展モデルとして米国、中国、南ア、旧宗主国、自国、その他の6つの選択肢を選んだシェアと対比しています。左が女性、右が男性です。

なお年齢については80歳で切っています。回答の中には120歳!のような回答もあり、(仮に本人が自分では120歳だと思っていても)正確さが疑われると思ったためです。加えて(超)高齢の回答者数が非常に少ないので、これを入れて傾向を見るとバイアスが出てしまう恐れもあります。

まず男性も女性も、年齢層が高くなるほど、米国をモデル(黒)として選ぶ比率が低下する傾向が明らかです。しかし代わりに中国(青)を選ぶのかと言えば、そうでもない。女性の場合は中国を選ぶ比率も下がり(減少の程度は緩やかですが)、男性の場合はほぼフラットです。

代わりに男女とも上昇するのが、「自国独自のモデル」という選択肢(紫)。アフリカ諸国の多くは植民地からの独立が1960年代に集中しており、この辺りの年齢層は独立への気概、自国へのプライドといったものが若年層より強いのかもしれません。

また女性は年齢が上昇すると南ア(黄)を選択する傾向が上がりますが、男性は逆。男性はむしろ旧宗主国(赤)を選ぶ傾向が高まります。これはどう考えればいいのだろう?

一方、教育水準で見ても、(特に女性で顕著ですが)中等教育修了レベル辺りでアメリカ支持(黒)がピークになり、その後はアメリカ支持が低下します。これに対し中国支持(青)は、年齢による傾向とは違い、女性では教育水準が上がるほど高まる様子が見られます(院卒レベルでは落ちますが)。男性の場合はほぼフラットという感じですかね。

また年齢の場合は傾向が顕著だった自国独自モデル(紫)ですが、教育についてはあまり関係がありません。むしろ「その他」(緑)が教育水準が上がるに従い、顕著に増えているのは謎。

ただちょっと注意すべきは、教育水準での回答者のボリュームゾーンは中等教育前後。大学、大学院という高等教育を受けた回答者は非常に少なく、この傾向が本当に正しいかは慎重に見たほうがいいでしょうね。

影響力への評価と発展モデルの選択はつながるのか

次に前回も見た米中の影響力に関する見方と、発展モデルの選択とを対比してみます。国ごとに「中国の影響力」「米国の影響力」の見方の平均をとり(強く好感:プラス2~強く反感:マイナス2)、これと「最良の発展モデル」として米国あるいは中国を選ぶシェアとを比べます。

ただ「影響力」は背反ではなく、中国も米国もプラスに見る人は多く存在します。一方、「発展モデル」は一カ国しか選べないため、若干、指標の性格が異なります。そこでもうひとつ、国ごとに「中国の影響力への見方」-「米国の影響力への見方」の差も計算します。両国とも好意的に見ていても、その差がより大きい国と拮抗している国では、微妙に違う選択をするかもしれません。

一番左が中国の影響力、真ん中が米国の影響力、一番右が両国の差(プラスほど中国に好感)との比較です。

まず中国の影響力への見方と比較すると、実は最良モデルとして中国を選ぶ傾向も、米国を選ぶ傾向も、ともにポジティブです。つまり中国の影響を好感する傾向が強い国では、だからといって米国を嫌っているわけでは恐らくなく、米国を発展モデルとして選択する人も同じように増える傾向があります。加えて、その水準自体、全体的に米国を選択する人のほうが多くなっています。

一方、米国の影響力への見方と比べると、明らかに米国を最良の発展モデルとして選ぶ傾向が顕著に見られ、逆に中国を選ぶ傾向はほぼフラットかマイナス。ここには中国の発展モデルに対する懐疑的な傾向、あるいは少なくともポジティブには見ていない傾向が確認できます。

最後に影響力への評価の差(プラスは中国への好感度のほうが高い)と比較すると、中国の発展モデルを選択する傾向が顕著。逆に言えば、中国への好感度が低いと、中国の発展モデルを拒否、米国の発展モデルを選ぶ傾向が顕著です。

ただし、このギャップがゼロの辺り(gapだけ垂直線を入れています)では、明らかに米国を選ぶ度合いが中国より高く出ています。両国への見方が同じ程度であれば、まだ米国モデルへの信頼感が明らかに高いということでしょう。

まとめると、国の発展モデルとしては、米国がある程度普遍的な支持を受けている一方、中国を選ぶ人は、何らかの形で中国からの影響を強く支持する層に、強く偏っているということはできるかもしれません。

とはいえ、現在のトランプ政権による国際秩序の無視、関税による他国への威圧、開発援助の大幅打ち切り、端的に言えば有色人種への差別という傾向を見れば、今後、この発展モデルとしての米国支持の水準自体が大きく落ちていく可能性は否定できないように思えます。

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