トランプ大統領の就任後、怒涛の100日間が過ぎました。伝統的には最初の100日間はメディアも批判を抑えると言われているようなのですが、さすがに今回は、そうはなっていません。お互いに罵倒しあっています。
まぁ、個別の公約の実現状況など、私にはちゃんとフォローできないので、支持率・株価等で歴代政権との比較を簡単におさらいしておきます。
世論調査の支持・不支持率
まず簡単に、就任後100日時点での世論調査による大統領支持率・不支持率を比較しておきます。バイデン政権まではギャラップ調査によるもの、トランプ2期目は各種調査の平均なので、同じベースで比較はできません。
しかしNew York Timesの調査で42% vs 54%、Fox Newsでも44% vs 55%とのことなので、政治的に偏った結果ではないと言えると思います。トランプ自身は「正当な世論調査ならば60%台か70%台だ」と言っていて、熱烈支持者もそう信じているのでしょうけど。まぁ、笑うしかないです。
このベースではありますが、左下の区画(支持率50%以下、不支持率50%以上:不支持率(y軸)は逆転させています)にいるのはトランプのみ。しかも2期ともここにいるというのは見事です。それでも1期目に比べると、少し50/50に近づいているのは、トランプを受け入れてもいい(あるいは、そう表明してもいい)という方向に、微妙に世論が移ってきているのかもしれません。
このように明らかに歴代政権より低い支持率とはいえ、今でも4割が支持しているということは、この辺りは何があっても離れない岩盤支持層なのでしょう。しかし同時に、絶対トランプはダメという岩盤不支持層も同じぐらいいるはず。あまりに二大政党が(あるいは、その支持層が)離れすぎてしまい、親子や夫婦の間でも政治的な話がタブーになっている、近年は感謝祭やクリスマスにも家族が集まれないなどと言われます。
やはり、これだけの人口がいて、しかも人種や宗教、所得・資産水準でもバラバラなアメリカで、民主・共和の2大政党しか現実的な投票先にならないというのが間違っているような気がしてなりません。
ケネディの人気はちょっと別格ですが、ニクソンですら、かなり右上の領域にいたというのは驚き。しかし、近年のアメリカの政治情勢を考えると、こういう状況になることは、もう期待できないのではないかと思います。以前、大統領選挙の州別、カウンティ別の得票率で二極化が進んでいるのを見ましたが、やはりこのグラフでも近年の大統領では支持/不支持率が拮抗する原点の方向に進んでいます。

就任100日時点での株価
トランプは就任100日目の演説で、「何百もの選挙公約を達成している」「関税措置を巡って130ヵ国以上が接触してきた」「不法移民が99.999%減った」「ガソリン価格は1.98ドルになった」等、自分の実績を誇示していました。
さらに第一四半期のGDP成長率がマイナスとなりましたが、「それはバイデンのせいだ」と言い切って憚らない。この絶対に負けを認めない、事実かどうかは関係なく大声で主張できる、前に自分が言ったこととの整合性も気にしないという性格は、個人的にはうらやましい限り。
まぁ、いろんなメディアがファクトチェックをやって、ほとんど嘘ばかりという評価です。でもトランプ支持者はこういうメディアを「フェイクニュース」といって否定しますし、私にはこれらを丁寧に評価するデータも、もっと言えば忍耐力もありません。
そこで、簡単にデータが得られる株価を見ておこうと思います。以下がケネディ以降の歴代大統領の就任式(ジョンソン、フォードを除き1/20)から100日後の株価の上昇・下落率です。100日目が週末等で休場の場合、前日データを使っています。
左パネルのSP500を見ると、トランプ2期目の株価は、かろうじてフォード政権のおかげで最低ではありませんが、全く芳しくない状況。まぁ、フォード大統領(就任式:1974/8/9)はウォーターゲートでニクソン辞任という大混乱の後、また前年の第一次石油ショックの影響で経済もマイナス成長になった年でしたので、仕方ないという部分はあります。
同じことを日経平均でも見てみます(右パネル)。Yahoo financeでは1965年以降しかデータが取れなかったので、大統領としてはニクソン以降となります。
日経でもフォード政権期が最悪、トランプ2期目がそれに続きます。面白いのはSP500ではマイナスだったカーター政権期に日経はプラス。ブッシュ(子)政権期も、マイナスではあるものの、ごく限定的でした。ベストは、SPの成績が悪かったクリントン期です。そこいくと今回は、完全にアメリカに引きずられています。

今回の動きを各国で比較
因みに今回、世界各国の株価はどうだったのかを見たのが以下のグラフ。やはり相互関税の発表が大きなイベントだったので、就任式から相互関税の発表翌日(4/3)まで、また就任式から100日目までの上昇・下落率を並べています。
これをみると最悪は台湾。米国市場でもナスダックの下落率が高く、ハイテク企業が多い台湾への悲観が強かったようです。
相互関税で最大の標的になっている中国ですが、こちらは一応プラス。まぁ、ここは公的資金での買い支え介入があると疑われているので比較はできませんが、ちょっとしっくりときません。
トランプのいじめ標的になっているメキシコはなぜか大幅高。ドイツもヨーロッパでは病人扱いみたいなところがあるのに、株価はかなり堅調です。
これに対し日本は、米国よりは限定的ですが似たようなもの。なぜ他の国に比べて、ここまで日本が売られなきゃいかんのか不思議です。日本と同じような経済環境で、かつ大統領弾劾の混乱もある韓国よりもパフォーマンスが低いのは、どうにも釈然としません。
どうも日本の投資家は(外国人投資家の比率も高いのでしょうが)、トランプ関税に過敏すぎるのではと思ってしまいます。長く続いたデフレも終わり、賃金も(不十分かもしれんが)上昇を始めており、もう少し強気になってほしいものです。
まぁ、米国市場から日欧市場に資金シフトが起きているとの見方もあり、この後は力強く伸びてくれることを期待しましょう。
