途上国のデフォルト。中国向けは日本より先か後か?

前回は中国融資のデフォルト状況、資源担保ローンの疑いについて概観しました。その作業中、果たして途上国は債権国の間で、返済順位に差をつけているのだろうかと疑問に思ってしまいました。今回は、ちょっとこの辺りを、ごく短く、簡単に探ってみようと思います。

デフォルト件数の推移

前回見たデータはデフォルトした金額ベースでした。今回は「新規デフォルトの発生件数」に集計しなおします。以前からデフォルトが発生していて、今年もデフォルト状態が継続したという状況ではなく、前年まではちゃんと返済できていたのが、今年から新たに返済できなくなったという件数のみをカウントしたものです。

2020年に突出しているのは、コロナで経済が止まったせいなので、仕方ありませんね。パリクラブ(=日本などのOECD諸国)、中国、その他公的債権者(以下では「非パリクラブ」と書きます)とも同じような件数で発生しています。MDB、Bank fc、Bonds fc等の意味は前回記事をご覧ください。

前回の金額ベースだと目立ちませんでしたが、件数ベースで見ると、中国向けのデフォルト(緑色)というのは、1980年代以降、毎年コンスタントに起きていたことが分かります。しかし当初は件数的にはパリクラブ(赤色)、非パリクラブ(紫色)より少なかったのが、近年は件数でも凌駕し始めます。やはり一帯一路以降に増えた中国の融資が焦げ付いたのでしょう。

返済順序を類推すると

途上国がデフォルトする際、例えばパリクラブ向け(つまり日本を含む先進国向け)には頑張って返済するが、中国には早めにギブアップするとか、逆に中国にデフォルトすると資源を取られてしまうので、紳士的なパリクラブに先に駆け込むとか、そういった順序があるのか考えるため、簡単な集計作業をしてみました。

因みにちょっと技術的な話になりますが、パリクラブのどこかの国(例えば日本)に対して債務不履行が発生すると、それはパリクラブ加盟国全体の問題として扱われ、問題が解決しないと新規融資が受けにくくなるなど、一種の制裁が科されます。典型的にはIMFが介入して(通常は緊縮的な)経済再建策を伴うIMF融資が行われ、その中でデフォルトが解消されていく、という流れになります。ということで、途上国にとってはあまりうれしくない状況だと考えるべきでしょう。

例えばパリクラブからの融資に対し、新規にデフォルトが発生した年を抽出して、その年に他の債権者(中国、非パリクラブ、また民間債権者や債券など)への返済がどのような状況だったのかを集計して、シェアを計算しました。正常(normal)、新規デフォルト(default)、デフォルト継続(continue)に分けています。同じことを、他の債権者向けでも集計しました。

これを見ると、パリクラブに新規デフォルトした年は、非パリクラブに対しては大半のケースでデフォルト継続(青)しています(86.5%)。新規デフォルト(緑:パリクラブ向けと同じタイミングでデフォルト発生)はごくわずか(3.2%)。一部は非パリクラブ向けが正常(赤)というケースもありますが(10.3%)、デフォルト(新規+継続)に比べるとわずかです。

中国と民間向けの状態は、非パリクラブほどではありませんが、やはりデフォルト継続が半分となっています(ともに50.8%)。また非パリクラブに比べると新規デフォルト(緑)の部分が大きくなっています(中国11.9%、民間7.9%)。こう見ると、まず非パリクラブからの借り入れに対して最初にデフォルトが発生し、それに次いで中国融資、最後にパリクラブ(先進国)という順番となる傾向が強いと言ってよさそうです。

同じことを中国向けで見ると、新たにデフォルトが起きた時点で、すでにパリクラブ向けでデフォルトが発生していたのは7.9%、同じ年に発生したケースが11.9%、大半は同じ年でもパリクラブ向けには正常に返済しています。ただし非パリクラブ向けで見ると、67.5%のケースで継続デフォルト状態にあります。やはり、中国と非パリクラブ債権者との間では中国への返済が優先されていると考えてよさそう。

非パリクラブ向け新規デフォルトのケースを見ても、パリクラブ向け、中国向けにデフォルト(新規あるいは継続)が発生しているケースは、かなり少なくなっています。

こう考えると、途上国の返済優先度としては、パリクラブ→中国→非パリクラブという順番がありそうな感じはします。やはり先進国向けにデフォルトすると、銀行や債券を含めて色んなファイナンスへのアクセスに問題が生じるし、IMFが入ってきて厳しい経済政策をとらされるので、できる限り避けたいのでしょう。それくらいなら、中国に資源を持っていかれたほうがいい、とまで言えるかは分かりませんが。

また債券や銀行は、パリクラブと非常に似た形になっていて、できる限り、この辺りへのデフォルトは避けたい意向が見て取れます。やはりこの辺りへのデフォルトとなると、最終的に法廷闘争に持ち込まれて、保有資産をむしり取られるというケースもあって怖いんでしょう。債券の場合など、いわゆる「ハゲタカファンド(vulture fund)」というやつが横行して、デフォルトしそうな債権を投資家から安値で買い取り、法廷闘争に持ち込んで無理やり返済をさせ、それで大儲けをするという事例が多くありました。ホントに企業弁護士ってのは相手にしたくない連中です。

非パリクラブや中国の場合、そこまで怖いと思われていないのは、もしかすると資源売却で相殺してくれるので楽だと思われているのか。まぁ、この辺はよく分かりませんが。

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